法人名のフリガナについて

世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(平成29年5月30日閣議決定)の別表において「法人が活動しやすい環境を実現するべく,法人名のフリガナ表記については,・・・登記手続の申請の際にフリガナの記載を求めるとともに,法人番号公表サイトにおけるフリガナ情報の提供を開始することとされました。

平成30年3月12日以降に,商業及び法人登記の申請を行う場合には,申請書に法人名のフリガナを記載しなければならなくなりました。

フリガナは,「株式会社」や「一般社団法人」等を除いて行うこととなり,カタカナでスペースを空けずに詰めて記載します。

また,商業・法人登記申請の機会がない場合には,フリガナに関する申出書を管轄法務局に提出することも可能です。

なお,登記申請書や申出書に記載したフリガナは,国税庁法人番号公表サイトを通じて公表されることになります。

(ただし,外国会社については,税務署に提出した申出書等に記載したフリガナが公表されます。有限責任事業組合契約及び投資事業有限責任組合契約の情報は,法人番号公表サイトでは公表されていません。)

子どもの保護から考える離婚を中心とした裁判手続き

昨日「平成29年度第11回千葉司法書士会の研修会」に参加してきました。

講師は,東京家庭裁判所の判事でした。

離婚調停が,不調(調停不成立)に終わった場合,離婚訴訟になるのですが,その際,以下の3点が必要とのことでしたので備忘録的に記しておきます(聞き取りの際,聞くのを忘れなでください)。

1 子の監護に関する陳述書

2 間取り図

3 収入を証する書面

以上の3点を忘れる(離婚裁判が始まれば教えてくれますが)ことのなきように,最初からあった方がよいですね。

相続の限定承認

限定承認

 

民法922条では,「相続人は,相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して,相続の承認をすることができる。」と規定しております。

 

相続人にとって,相続が開始しても,被相続人の財産や負債の金額が正確に分からない場合もあり,万が一負債の方がプラス財産より多額であったとしても,引き継いだプラス財産の限度で債務(マイナス財産)の弁済等を行う方法です。

プラス財産の方が多いと思って相続を単純承認した後になって多額の負債が出てくる場合もありますし,相続の放棄をしてしまうと,次順位の方が相続人となりますので,次順位の相続人に多少の迷惑が掛かってしまう場合もあり得ますし,放棄をすると,被相続人の所有していた不動産等も手放すことになるため,思い出の場所も手放さなくてはなりません。

相続の単純承認と放棄の中間的なものとして,この限定承認があります。

プラスの財産の範囲でマイナス財産を支払えばよいのなら,こんなうまい話はない,と考える人もいると思いますが,まず,単純承認を選択する場合には,特にどこかに単純承認を宣言する必要はなく,淡々と不動産の名義を変え,預貯金を解約するなどの相続の手続きをすればそれで足ります。

一方,相続の放棄は,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し,放棄の申述をしなければならず,相続放棄申述受理申立書を作成したり必要書類を収集したりしなければなりませんが,手続的には,そんなに複雑なものではなく(被相続人の死亡後数年経っているような場合は,少し難しくなりますが),特に問題がなければ裁判所に申立てをしてから2か月程度で,相続放棄申述受理通知が送付されて,裁判所での手続きは終了します。

本論の限定承認ですが,これは,複数相続人がいる場合,単純承認や相続の放棄の場合には,各相続人が単独で行えるのに対し,限定承認は,相続人全員が共同して行う必要があります。 一人でも反対すれば,この限定承認は利用できません。なお,共同相続人のうち1名が相続の放棄をした場合,残りの相続人が共同して行えば可能です。

また,限定承認は,財産目録の作成から,家庭裁判所への申立て,財産の管理,官報公告,個別催告,財産の処分,配当手付き,譲渡所得税の問題など法律の知識が必要になりますし,期限が定められている作業もあって,簡単な手続きではありません。

 

譲渡所得税について,相続財産の中に,(被相続人が)購入した時の価額より相続開始時点において価額が上昇(キャピタルゲイン)している財産(例えば不動産や株式等)がある場合,相続開始時点で譲渡したものとみなして譲渡所得税が課税されます。

単純承認の場合は,相続人が,相続した財産を売却しない限り発生しない譲渡所得税が,前倒し的に課税されてしまう問題があります。

被相続人の購入原価を引き継ぎますが,被相続人が,当該財産を購入した金額が不明な場合は,売却処分価格の5パーセント相当額が購入原価として取り扱われるため,価格上昇益(キャピタルゲイン)が多きくなる場合が結構あると思われます。

この申告は,被相続人の存命中の財産について,被相続人の所得として相続財産から清算させようとするものですので,準確定申告の方法で行うことになります。

なお,この譲渡所得税の支払いは,被相続人の相続財産から支出し,しかも優先債権であることから,配当の際には,まずは,この支払いに充てることになり,残余額をその他の債権者に配当(按分配当)することになります。

 

そのため,よい制度だと思いますが,複雑,面倒で時間もかかることから,この限定承認を選択される方が少ないのだと思われます。

なお,面倒で時間もかかると述べましたが,これらを専門家に手伝ってもらえれば,面倒さから解放されることも付け加えておきます。

 

限定承認の申立てをしようとする要件は,自己のために相続の開始があったことを知ってから3か月以内に,相続人全員が共同して,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し,限定承認する旨の申述をすることになります。

申立の趣旨は,「被相続人の相続を限定承認します」ということになり,財産目録を作成して申立書と一緒に家庭裁判所に提出します。

申立てに際し必要な書類(第一順位相続人の場合)は,

①被相続人の出生時から死亡時までのつながりのある除籍謄本(改製原戸籍謄本)

②被相続人の住民票除票または戸籍の附票

③申述人全員の(現在の)戸籍謄本

④被相続人の子で死亡している方がいる場合,その子の出生時から死亡時までのつながりのある除籍謄本(改製原戸籍謄本)

 

申立書に貼る収入印紙は,800円で,予納郵券が,申述人の数や裁判所の取扱いによって変わってきますが,申述人3名で500円くらいです。

複数申述人がいる場合は,相続財産の管理人が原則1名,相続人の中から選任されますので,適任者がいれば,申立書の記載の中で,候補者として上申しておくことも検討してください。

 

申立後について

申立書を家庭裁判所に提出して,問題がなければ,相続の限定承認の申述が受理され(審判書の謄本が送付されます),複数申述人がいる場合には,原則1名の相続財産の管理人が選任されます。

民法927条では,限定承認者は,限定承認をした後5日以内に,全ての相続債権者及び受遺者に対し,限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求を申出をすべき旨を公告しなければならない,と規定されており,民法936条3項において,927条1項中,限定承認をした後5日以内とあるのは,その相続財産の管理人の選任があった後10日以内,と読み替えるとの規定があります。

したがって,限定承認者が1名の場合は,この官報公告を相続の限定承認が受理されてから5日以内に,複数いる場合には,相続財産の管理人が選任されてから(限定承認の申述の受理と同時)10日以内に行わなければならないことになります。

相続の限定承認受理通知書は,何もしなければ郵送で送付されますが,受理された日から既に数日経過して手元に届く場合もあるため,官報販売所には事前に掲載日などを確認し打ち合わせをしておく必要があります。

また,知れている債権者には,各別の催告も行う必要があるため,催告書を作成の上,債権者に通知することになります。

 

財産の換価

被相続人のプラス財産が,債務の引き当てになるため,プラス財産の換価手続きは,公正に行われなければなりません。

民法932条では,原則,相続財産の売却は,競売による方法となっています。

また,同条ただし書では,「家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して,その競売を止めることができる,と規定されています。

競売の場合は,相続人等親族が買い取れる可能性が100%でなく,第三者に落札される可能性がありますし,そもそも,限定承認をした相続人は債務者にあたることから,競売手続きに参加することができません。

愛着のある不動産や事業などを守るために限定承認を選択する相続人もいますので,これでは本末転倒です。

そこで,ただし書の規定によって,家庭裁判所に鑑定人を選任してもらい,鑑定価額以上の金員を相続財産の管理人に支払えば,その財産を買い取った相続人の名義にすることができます。

なお,この権利(先買権)の行使ができるのは,限定承認をした相続人だけが,これを行うことができます。

したがって,鑑定価額を用意できれば,被相続人の財産を相続人の財産にすることが可能となるのです。

単純化して述べれば,不動産の鑑定評価額が500万円,負債が1000万円(抵当権設定なしとする)の場合で,鑑定価額500万円を相続財産の管理人に交付すれば,残りの負債500万円は支払う必要がないことになります。

 

不動産の登記手続きはどうなるのか?

限定承認は,単純承認でもなく相続の放棄でもないが,被相続人の財産を限定があるものの承継する手続きであるため,法定相続による所有権移転手続きをまずは行うことになります。

 

限定承認者A(妻)・B(子)とした場合

法定相続分による相続登記を行うと,

持分2分の1 A

持分2分の1 B

 

なお,法定相続分と異なる割合で相続登記を行うと,相続人間における財産の処分とも評価し得るため,まずは,法定相続分に基づいて相続登記を行う必要がある。

 

次に,A(妻)が,先買権を行使して,鑑定評価額500万円を相続財産の管理人に交付した場合

 

登記の目的 B持分全部移転

原   因 民法932条ただし書による価額弁済

権利者   持分2分の1 A

義務者          B

 

これで,A(妻)の単独所有の不動産になるのです。

 

ここまででの問題点として,

①鑑定人選任の申立ての際の鑑定費用等は,どこから支出するのか?

これは,申立てをした限定承認者の負担になると考えられますので,被相続人の相続財産からの支出は避けるべきです。

②鑑定評価額の支払原始はどうしたらよいか?

先買権を行使する自己の財産から支弁する必要がありますが,生命保険金があれば,この保険金で支払うことも可能です。

なお,生命保険金ですが,全てではありませんが,例えば,保険金受取人が特定の相続人と指定されている場合は,相続財産とはならず,指定された相続人の固有財産となるため,このような保険契約の場合には,例え相続の放棄をしても,保険金は,相続人が受領することができます。

 

限定承認の相続財産の管理人は,相続人不存在時の相続財産管理人や不在者財産管理人と違って,裁判所の監督を受けませんので,特に,選任後の報告義務などは定められておりません。

全て,相続財産の管理人の裁量と責任で行う必要があり,清算弁済手続きに瑕疵があった場合は,損害賠償の責めを負うことになるため,注意が必要です。

 

配当手続き

上記のとおり,相続財産の管理人は,相続財産を競売又は鑑定人の鑑定評価額以上の金員を受領し,換価手続きが完了され,相続債務の弁済が実行されて,限定承認の手続きは終了します。

配当順序

①優先債権

②一般債権

③受遺者

④期間内に申出をしなかった債権者,知れていない債権者

⑤期間内に申出をしなかった受遺者

 

相続財産の管理人は,弁済期にない債権であっても,弁済をしなければなりませんし,条件付き債権又は存続期間の不確定な債権は,家庭裁判所の選任した鑑定人の評価に従って弁済しなければなりません。

 

相続の基本3類型

相続する前に知っておきたい3形態(相続の種類

単純承認

相続が発生すると,被相続人が一身専属している権利と義務以外の全ての権利と義務が相続人に承継することになります。

権利も義務もということなので,土地の所有権も預貯金債権も被相続人の借金もその全てが承継されます。

相続が開始して,最も多い形態が,この単純承認です。

民法921条では,次に掲げる場合には,相続人は,単純承認したものとみなすとして,

1 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸借をすることは,この限りでない。

2 相続人が第915条第1項の期間内(相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に,相続について,単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。)に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

3 相続人が,限定承認又は相続の放棄をした後であっても,相続財産の全部若しくは一部を隠匿し,私にこれを消費し,又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなったとき。

 

と定められており,3か月という短い熟慮期間内(期間伸長は申立てにより可能)にどの相続形態を選択するかを決めなければならず,その期間を徒過することによって,単純承認していることも多いと思われます。

相続の限定承認や相続の放棄と異なり,単純承認は,家庭裁判所の手続きを経ることなく,最もオーソドックスなスタイルといえますが,消極財産(マイナス財産)が積極財産(プラス財産)より多かったとしても,その負の遺産も相続人が承継することになります。

また,3か月が経過しなくても,相続人が相続財産の一部でも処分したときは,単純承認したものとみなされてしまうため,プラス財産が多いのか,あるいはマイナス財産の方が多いのか確定しない段階においては,被相続人の財産に一切手を付けないことが重要になってきます。

例えば,相続登記をしてしまった後に,莫大な負債が見つかっても,「今から相続の放棄をしよう」としても,単純承認をしたとみなされる結果,もはや相続の放棄をすることはできず,被相続人の借金を返していくか,あるいは相続人自身で支払いが困難であれば自己破産等の債務整理を行う必要も出てきます。

なお,民法915条第2項では,「相続人は,相続の承認又は放棄をする前に,相続財産を調査することができる。」との規定があるため,相続形態を選択する前に遺産の調査を行うことができますが,実際には,三か月以内では足りない場合も多々あるため,この場合には,家庭裁判所に対して,期間伸長の申立てをして,その審判を得てさらに遺産の調査を続行することになります。

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相続と使用貸借

母親と長女が同居しており,母親が死亡した場合,長女は,直ちにその建物から立ち退かなければならないのか?

最判平成8年12月17日

「共同相続人の一人が,相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは,特段の事情のない限り,被相続人と右同居の相続人との間において,被相続人が死亡し相続が開始した後も,遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は,引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって,被相続人が死亡した場合は,その時から少なくとも遺産分割が終了するまでの間は,被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり,右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。

けだし,建物が右同居の相続人の居住の場であり,同人の居住が被相続人の許諾に基づくもであったことからすると,遺産分割までは,同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが,被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。」

 

以上のように,生前,母と子が同居していた場合,母の死後も,子は,遺産分割協議等が終了するまでの間は,その建物に居住することができ,また,使用貸借契約関係が遺産分割が終了するまでは続くことから,子は,無償で居住していられることになります。

職権消除と相続財産管理人選任の申立て

市長村長が,職権消除した者について,相続が開始したことになるのか?

「事案の概要」

① 所在不明者が100歳以上の高齢に達している場合には,市町村長が職権により死亡記載をすることができる(戸籍法44条3項・24条2項),というのが戦前からの戸籍実務の取扱いである(高齢者職権消除。大正5年2月3日民事第1836号司法省民事局長回答,昭和6年2月12日民事第1370号司法省民事局長回答,昭和24年9月17日民事甲第2095号法務省民事局長回答,昭和32年1月31日民事甲第163号民事局長回答「100歳以上の高齢者の所在が不明で,その生死及び所在につき調査の資料を得ることができないときは,市町村長より職権消除の許可申請書にその事由を記載し戸籍謄本及び戸籍附票謄本を添付させ,監督法務局又は地方法務局の長においてその消除を許可して差し支えない。」)

②高齢者職権消除の手続きにより,A女の戸籍は,昭和27年11月6日付け許可を得て,同月10日に除籍された。

③そこで,Xは,Aの除籍謄本を添付して,松山家庭裁判所に,相続財産管理人の選任の審判申立てを行った。

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法定相続情報証明制度

平成29年5月29日(月)から,全国の法務局において,各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。

今までは,銀行預金等の相続手続では,お亡くなりになられた方の出生からの戸除籍謄本等の束(多ければ何十通)を,相続手続を取り扱う各窓口に何度も出し直す必要がありました。

法定相続情報証明制度は,法務局に戸除籍謄本等の束を提出し,併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すれば,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してくれます。

その後の相続手続は,法定相続情報一覧図の写しを利用いただくことで,戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。

これで,同時に,複数の相続手続きを行うことができ(これまで同時に行う場合には,戸籍の束の原本を何通も用意しなければなりませんでした),時間と各窓口担当者の事務負担の軽減が図られ,迅速に相続手続きを進めることができるようになります。

お亡くなりになられた方が不動産を所有していた場合,不動産の相続登記申請と同時に,この申出をすれば,1回の手続きで不動産の相続登記と法定相続情報一覧図の交付を受けることができ,交付を受けた法定相続情報一覧図を,他の管轄の不動産登記申請に利用したり,預貯金の相続手続きに利用できるなど,活用の場は広がっていくと思われます。

注意点としては,この法定相続情報一覧図は,相続手続きだけに利用が認められること,法定相続人を一覧図で明らかにするものであって,相続放棄や遺産分割協議の結果や法定相続分の記載がなされるものではないことなど,様々な形態のある相続手続きにおいてこれで全て事が足りるというではないことはご理解いただきたいと思います。

自筆証書遺言の押印について

自筆証書遺言は,署名押印を一つの要件としているものの,これが欠けた自筆証書遺言は,効力を生じないか? という問題があります。

 

第968条1項では,「自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければならない。」とされており,押印が欠けると折角の遺言も無効になってしまいます。

 

そして,この趣旨として最高裁(平成1年2月16日判決)は,遺言書全文の自書と相まって遺言者の同一性及び真意を確保するともに,重要な文書については作成者が署名しその下に押印することで文書の作成を完結させるという,我が国の慣行ないし法意識に照らして,文書の完成を担保するところにあるとしています。

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遺言内容と異なる遺産分割協議

相続で,よく相談を受ける一つのテーマとして,

遺言内容と異なる遺産分割協議はできるのでしょうか?

前提条件として,

① 遺言で,遺産分割が禁止されていない。

② 遺言執行者が定められていない(厳密にいうと,遺言執行者が同意すれば可能)。

③ 相続人全員の合意がある。

以上を満たしている場合,次の裁判例によっても,認められています(上記②には裁判例がありますが,割愛してます)。

 

[さいたま地方裁判所平成14年2月7日判決]

(1)特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合には,当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなど の特段の事情のない限り,何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該不動産は当該相続人に相続により承継される。そのような遺言がなされた場合の遺産分割の協議又は審判においては,当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても,当該遺産については, 上記の協議又は審判を経る余地はない。以上が判例の趣旨である(最判平成3年4月19日第2小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)。

しかしながら,このような遺言をする被相続人(遺言者)の通常の意思は,相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生ずることを避けることにあるから,これと異なる内容の遺産分割が全相続人によって協議されたとしても,直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。

被相続人が遺言でこれと異なる遺産分割を禁じている等の事情があれば格別,そうでなければ, 被相続人による拘束を全相続人にまで及ぼす必要はなく,むしろ全相続人の意思が一致するなら,遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当である。 法的には,一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まるものではあるが,このような遺産分割は,相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが 可能であるし,その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明である。また従前から遺言があっても,全相続人によってこれと異なる遺産分割協議は実際に多く行われていたのであり,ただ事案によって遺産分割協議が難航している実状もあることから,前記判例は,その迅速で妥当な紛争解決を図るという趣旨から,これを不要としたのであって,相続人間において,遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず,その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである。

(2)本件においては,本件土地を含むDの遺産につき,原告ら全ての相続人間において,本件遺言と異なる分割協議がなされたものであるところ,Dが遺言に反する遺産分割を禁じている等の特段の事情を認めうる証拠はなく,原告らの中に本件遺産分割に異議を述べる者はいない上,被告は本件遺産分割については,第3者の地位にあり,その効力が直ちに被告の法的地位を決定するものでもないことを考慮すると,本件遺産分割の効力を否定することはできず,本件土地は原告らの共有に属すると認められる。

 

国税庁のホームページより ,

遺言書の内容と異なる遺産の分割と贈与税

【照会要旨】  被相続人甲は,全遺産を丙(三男)に与える旨(包括遺贈)の公正証書による遺言書を残していましたが,相続人全員で遺言書の内容と異なる遺産の分割協議を行い,その遺産は,乙(甲の妻)が1/2,丙が1/2それぞれ取得しました。この場合,贈与税の課税関係は生じないものと解してよろしいですか。

【回答要旨】  相続人全員の協議で遺言書の内容と異なる遺産の分割をしたということは(仮に放棄の手続きがされていなくても),包括受遺者である丙が包括遺贈を事実上放棄し(この場合,丙は相続人としての権利・義務は有していま。),共同相続人間で遺産分割が行われたとみて差し支えありません。したがって,照会の場合には,原則として贈与税の課税は生じないことになります。

 

千葉県での相続なら,

http://chibakensozoku.jp/

 

当事務所オフィシャルHP(千葉県民司法書士事務所)

http://chiba-shihoshoshi.com/

 

 

住宅ローンを引き継いだ後の債務整理

住宅ローンがある場合の債務整理

 

住宅ローンの残額がある方が亡くなってしまった場合で,相続放棄もせず期間が経過しまった場合,住宅ローン債務や,その他のお亡くなりになった方の借金も相続する(引き継ぐ)ことになります。

その場合,相続人が住んでいる不動産であれば,それを手放したくないお気持ちは十分に理解できるところです。

また,相続人自身にも債務があった場合,自身の債務と合わせて被相続人の債務も返済していかなければならず,大きな負担になります。

もっとも,支払いが難なく実行できるのであれば,約定のまま支払いを継続していけば問題はないのですが,支払いが厳しい場合には,返済を楽にする方法を検討する必要があります。

 

 

一般的な債務整理の方法についてご説明します。

主に,住宅ローン及び住宅ローン以外の借金も相続してしまったり,相続した債務に合わせて相続人自身にも借金がある場合を想定しています。

 

任意整理をする場合

住宅ローンがあっても,任意整理は可能です。

住宅ローンは,任意整理の対象にはなりませんが,住宅ローン以外の借金を任意整理することによって債務を圧縮して,住宅ローンの返済を少し楽にすることができます。

また,住宅ローン以外の借金を圧縮しても,それだけでは,住宅ローンの返済が楽にならない場合には,住宅ローンの返済自体を軽くすることも考えなければなりません。

住宅ローンについて,利息ゼロにすることはできませんが,返済期間を延長したり,元金据置といって,住宅ローン以外の債務について,任意整理で決まった期間の返済が終わるまでの間は,元金だけ支払って,住宅ローンの利息は,任意整理の期間が満了した後に上乗せして支払うというものです。

しかし,これには,住宅ローン債権者の承諾が必要となるため,簡単にはいかないことも多くあります。

借り換え(A銀行の住宅ローンを,B銀行で新たに住宅ローンを組んで完済して,利率などの好条件の住宅ローンに切り替えるというもの)も検討することになりますが,住宅ローン以外の負債は,信用情報機関に登録されているため,住宅ローンの申し込みをしても,審査に通りにくいことが想定されます。

このような場合には,住宅ローンは現状のまま支払いを継続していくこととし,住宅ローン以外の借金について月額返済額を大きく減らす必要があります。

まずは,住宅ローン以外の借金について,どの程度まで毎月の返済額を減額させることに成功するのかが一つの鍵となります。

なお,住宅ローン以外の借金に関しては,任意整理をすると,それ以降の利息の支払いは原則免除になりますので,返済計画が立てやすくなります。

今までは,毎月1万円を返済しても,7000円は元金に充当されますが,残りの3000円は利息の返済に充てられるため,元金は7000円しか減りませんが,任意整理を行うことで,毎月1万円を支払えば,確実に元金が1万円減っていくことになります。

 

注意点としては,住宅ローン契約の約定に,次のような定めがあった場合です。

第〇条 お客様が,次の各号の一つにでも該当する事由が発生した場合は,当社からの通知,催告等がなくても,本契約による一切の債務につき当然に期限の利益を失い,直ちに債務を全額返済するものとします。

①お客様に破産,民事再生の申立てがあったとき

②お客様の預金その他の当社に対する債権について,仮差押または差押命令,通知が発送されたとき

(以下略。なお,銀行毎に文言や内容が異なりますので,ご自身の住宅ローン契約書等でご確認ください。)

住宅ローン以外の借金について,その債権者から住宅ローンを組んだ銀行に対する預金が差押を受けた場合,上記条項では,そのときにある住宅ローン残債を全額一括で返済(以後,分割返済はできないということ)しなければならなくなりますので,住宅ローン以外の借金については,遅滞に陥る前に適切に対処する必要があります。

 

 

個人民事再生の場合

民事再生は,該当する当事務所のオフィシャルホームページの該当ページをご参照いただきたいのですが,概要を述べると,住宅ローン以外の借金が,大幅に減額され,その減額された金額を原則3年で返済していくものとなります。

仮に,住宅ローン以外で500万円の借金があった場合,裁判所から再生計画の認可決定をもらうと,この500万円という借金が100万円に減額され,この減額された100万円を原則3年間で支払い,無事に支払い終えれば,500万円あった債務がゼロになるという手続きです。

この例ですと,月額返済額は,約2万7778円となり,500万円の借金を支払っていたときに比べれば,大きな減額になり,住宅ローンの返済がより支払いやすくなります。

しかし,任意整理と違って,個人民事再生の場合は,裁判手続きとなりますので,上記一例でありますが住宅ローン契約の約定にもあるとおり,民事再生の申立てをすると全額一括返済という事態にもなりかねませんが,個人民事再生には,住宅ローンに関し,特別な規定(住宅ローン特別条項)があり,これを利用できる限りにおいては,一括返済を強いられることはありませんのでご安心ください。

また,個人民事再生の申立をする際には,事前に,住宅ローン債権者との事前協議というものが必須となります。

したがって,住宅ローン特別条項を使う個人民事再生の場合には,住宅ローン債権者に内緒で手続きを進めることはできませんし,逆にいうと内緒にする必要もないのです。

なお,既に住宅ローンの返済に遅れが生じている場合で,保証会社への代位弁済が実行されてから6か月が経過してしまうと,住宅資金特別条項は使えなくなるので注意が必要です。

住宅ローンの支払いが滞ってしまう前に,まずは,無料相談をご利用いただくことをお勧めします。

 

 

自己破産の場合

この場合は,自宅の確保は,困難になります。

もし,この家にどうしても住み続けたいという強いお気持ちがあれば,親族に自宅を購入してもらって賃貸借等で済むか,あるいは自分たちが住み続けることを条件として購入してくれる買主を探さなければなりません。

買手が親族の場合には,賃料については柔軟に対応してくれると思われますが,第三者の場合には,投資として購入しているため,相場の賃料をそこに住んでいる間支払い続けなければなりません。

支払いを滞れば,明け渡しの請求を受けて,結局は,そこを出ていかなければならなくなります。

もしかすると,住宅ローンを支払っていたときとあまり変わりない金額の賃料になるかもしれませんし,これでは,何のために破産をしたのか分からなくなる場合もあります(このような場合には,上記の個人民事再生を先に検討してもよいでしょう。)。

この辺は,住宅ローン以外の借金先や借金の額にもよって異なってきますが,十分な検討が必要です。

 

自宅確保を諦めて自己破産をする場合

選択肢としては,大きく分けると2つあります。

1 住宅ローン債権者(または保証会社)が競売の申立てを行い,第三者に落札されるまで,その自宅に住み続ける。

この場合,住宅ローンの滞納状況や物件の評価によっても異なってきますが,半年間程度は住み続けられます(落札者が現れなければ,もう少し長く住んでいられます。)。

この間に,転居先を探したりするなどして出ていく準備をしていくことになりますが,この期間は,執行裁判所の進み具合や物件の立地などによっても異なるため,不確定要素が多くあり,いつでも出ていけるように準備をしなければなりません。

2 自宅を任意売却する。

競売という裁判所が関与する強制的な手放し方ではなく,簡単にいうと,自宅(不動産)を売主として条件の合う第三者に売却することになります。

 

任意売却のメリットとしては,

予め引越しなどの日程を,自分たちで柔軟に決めることができる。

一般的に,競売よりも高値で取引されるため,保証人などがいる場合,債務をより圧縮することができる。

形式的には,通常の売買なので,近所の方に住宅ローン等の滞納があることなどを知られる心配が減少する。

引越費用を,一定程度は確保できる(場合によっては持ち出しなく引越しができる。)。

滞納しているマンション管理費等がある場合,任意売却で清算される。

住宅ローン債権者も,競売よりも高値で売れるということは,それだけ多く回収できるので,協力的である。

任意売却後の住宅ローンの残額について,事情に応じて低額な金額での分割弁済の合意ができる可能性があり,合意した内容を履行している限りにおいては,給与等の差押えは原則ない。

 

競売の最大のメリットは,

何も自分たちでする必要がない(法律の規定に従って淡々と進められる。)。

 

 

一方任意売却のデメリットとしては,

抵当権が複数ある場合,後順位抵当権者が同意しないと成功しない。

自分で交渉することは困難なため,不動産業者に依頼しなければならないが,専門の不動産業者であれば,持ち出しゼロで,仲介手数料は,最後に売買代金から清算するが,専門でない不動産業者の場合,費用を請求されたりするケースもある。

既に競売手続きが開始している場合,時間的制約があり,期限内に買主が見つからない場合には,競売が先に完了してしまう可能性がある。

形式的には,通常の売買ですので,購入希望者に内覧させ,その立会も場合によってはしなくてはならない。

 

 

競売のデメリットは,

裁判所から選任された評価人や執行官が,自宅周辺で写真を撮影したりして近所の目が気になる。

競売物件は,裁判所で内容を閲覧したり,インターネットで公告されるため,一般的に近所の方が知ることは少ないと考えられるが,情報が公開されることにより,購入希望者や競売専門業者等が,近所に聞き込みをすることあるため,近所に不審に思われる可能性がある。

なお,参考までに民事執行法上,現地調査として次の規定がある。

 

民事執行法第57条

  1. 執行裁判所は,執行官に対し,不動産の形状,占有関係その他の現況について調査を命じなければならない。
  2. 執行官は,前項の調査をするに際し,不動産に立ち入り,又は債務者若しくはその不動産を占有する第三者に対し,質問をし,若しくは文書の提示を求めることができる。
  3. 執行官は,前項の規定により不動産に立ち入る場合において,必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすることができる。
  4. 執行官は,第1項の調査のため必要がある場合には,市町村(特別区の存する区域にあつては、都)に対し,不動産(不動産が土地である場合にはその上にある建物を,不動産が建物である場合にはその敷地を含む。)に対して課される固定資産税に関して保有する図面その他の資料の写しの交付を請求することができる。
  5. 執行官は,前項に規定する場合には,電気,ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を行う公益事業を営む法人に対し,必要な事項の報告を求めることができる。

このような事態にもなりかねません。

いえることは,返済ができないと思ったら,迷わず,専門家に相談をすることが重要です。

返済が滞り,債権者からの督促が厳しくなってから相談に訪れる方は後を絶ちません。

もう少し早く相談してくれれば・・・間違った相談場所でアドバイスを受けなければ・・・

そうなる前に,その道に詳しい専門家に出会えることが,債務整理が成功するか否かの鍵になるのかもしれません。