相続

郵便物で、相続財産が判明する場合も多くあります。

相続財産を把握するため、郵便物には気を付ける必要があります。

把握していなかった相続財産が、お亡くなりになられた方の郵便物で発見されることも多くあります。

しかし、注意も必要です。

遠方に住んでいた被相続人(お亡くなりになられた方)の自宅ポストに行けないため、死亡した方宛の郵便物を相続人(家族)に転送してくれたら、相続人は自分の自宅に居ながら郵便物のチェックができるのですが、郵便局が死亡の事実を知っている場合、転送を受け付けてもらえず、郵便物は差出人に返還されます。したがって、相続人が自宅で被相続人宛の郵便物の転送を届け出ても現在は受け付けてもらえません。

日本郵便のQAで、「死亡した受取人あての郵便物等を家族に転送してもらえますか?」との問いに、「ご家族の方から転送のお申出があっても、亡くなられたご本人さまの郵便物等を転送することはできません。受取人ご本人さまが亡くなられた場合、ご本人さまあての郵便物等は差出人さまへ返還されます。」との回答があります。

相続登記義務化

1 遺言がない場合

不動産の名義人に相続が開始したときには、当該不動産の所有権を取得した者は、「自己のために相続開始のあったことを知り」「当該不動産の所有権を取得した」ことを知った日から3年以内に相続登記をしなければならないのが原則であるが、同期間内に、当該不動産の名義人について相続が開始した事実と自らが当該不動産名義人の相続人である旨を登記官に申し出ることができるようになった。

これにより、複雑な相続登記をしなくとも義務を履行したものとみなされることになった。

これが、「相続人申告登記の申出」である。

2 遺言がある場合

遺言により、不動産の名義人の相続人に「遺贈」するとなっていたときは、当該相続人は、「自己のために相続が開始したことを知り」「当該不動産を取得したことを知って」から3年  以内に相続登記をする義務を負うことになるが、この場合も例外として「相続人申告登記の申出」をすることによって、相続登記の義務を履行したとみなされる。

3 遺産分割が成立した場合

所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、法定相続分の割合に応じて所有権を取得した者は、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記義務を負うが、これに加えて遺産分割によって所有権を取得した者は、当該遺産分割から3年以内に相続登記をする義務を負うが、次の点に注意が必要である。

  • 法定相続登記後に遺産分割が成立した場合の追加的申請義務

遺産分割によって、法定相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産分割の日から3年以内に相続登記をしなければならない。

  • 相続人申告登記の申出後に、遺産分割が成立した場合の追加的申請義務

申出後に、遺産分割が成立したときは、遺産分割の日から3年以内に相続登記をしなければならない。

4 代位者や官公署の嘱託により登記がされた場合は、申請義務については適用しない。

5 経過措置

令和6年4月1日から相続登記は義務になるが、その前に発生した相続については、「当該施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日又は当該施行日のいずれか遅い日から3年以内に相続登記をしなければならない。

6 正当な理由

相続登記は原則義務となるが、正当な理由があれば、その義務を免れることとなる。例示をするが、この例示にあてはまらないから正当な理由がないとは言えず、それ以外でも、個別具体的な事情があれば、正当な理由があると判断される。

  • 相続登記等の申請義務に係る相続について、相続人が極めて多数の上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
  • 相続登記等の申請義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかになっていない場合
  • 相続登記等の申請義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
  • 相続登記等の申請義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
  • 相続登記等の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

遺言に債務の記載

遺言には、プラス財産だけでなく、マイナス財産(債務)を引き継ぐ人を決めることができます。

ただし、債権者に対しては、「このような遺言があるから、私には請求しないで」とは言えません。原則、相続人の皆さんで被相続人の債務を負担しなければなりません(財産をもらっていない人も、債権者に言われれば、相続分は支払うしかないのが原則です。)。

実際に多くの方が、遺産を引き継ぐ方、もしくは遺産を多く引き継ぐ方が被相続人の債務を負担していると思われますが、揉め事を起こさないために、このようなことも決めておくこともできます(葬儀費用も、明確に誰が支払うべきかは法律では決まっていません。)。

第〇条 遺言者は、次の債務及び費用を長男〇(生年月日)に承継又は負担させるものとし、遺言執行者は、第〇条記載の預貯金等の金融資産から随時その支払いに充てることができる。

(1)遺言者の支払うべき未払いの公租公課、入院費用その他一切の債務

(2)遺言者の葬儀、埋葬等の費用

(3)本遺言の執行に関する費用

(4)遺言執行者に対する報酬

予備的遺言

遺言で、例えば「次の遺言者の財産を妻に相続させる。」と書いた後に、遺言者より先に妻が亡くなった場合、折角書いた遺言が、効力を生じません。

つまり、遺言書がない状態になります。

それを避ける意味でも、第1条に、上記を書き(主位的遺言)、第2条で、予備的に、「遺言者より先に、前記妻が死亡したときは、遺言者の〇〇に相続させる(または遺贈する。)。」とすることもできます。

遺言を残した方がよい方

遺産が少しでもあれば、遺言を書いておくべきですが(遺言があってよかった方も多くいます。)、「まだ先でいいじゃないか?」等で遺言書を遺さずに亡くなってしまう方も多くおります。

遺言書は、亡くなってはじめて効力が生じますので、いわば最後のご自身のお気持ちです。

人の死は、時期も含めて分からいものばかりですが、特に遺言を残しておいた方がよい方を記載してみます。

 

・お子さんのいない方

この場合、相続するのは配偶者とご自身の両親(両親がすでに亡くなっていても祖父母がいれば祖父母)が相続人になります。ご両親等がいなければ、配偶者とご自身の兄弟姉妹にいきます。

仮に兄弟姉妹が既にお亡くなりになっている場合、その子(甥や姪)に相続されます。

兄弟姉妹と付き合いが深い場合は別段かもしれませんが、多くは配偶者に全ての財産をあげたいと思う方が多いと思います。遺言で、全ての財産を配偶者として遺しておけば、その思いは叶えられますが、もし、遺言がない場合には、配偶者とご両親等と話し合わなければ、銀行預貯金も不動産も名義を変えることができません。

しかも、話し合いがまとまったとしても、全員の実印や印鑑証明書が必要となります。

 

・子または相続人の中に、特に世話になった方や今後世話になる方がいる場合

この方たちに多くの財産をあげたいと思うことは、お気持ちとしてよく分かります。

寄与分で調整したり、遺留分を主張される可能性もありますが、遺留分も全部の相続分ではありませんし、お気持ちを残しておくことは大事なことかもしれません。

また、例え遺留分があったとしても、遺留分は主張せずに遺言書に従うことも考えられます。

 

・子または相続人の中に障がいをもつ方や特に保護する必要の方がいる場合

実際には、その方たちに財産を残しても、折角の財産が騙されるなどによって無くなってしまう可能性もあるため、財産管理等を第三者に任せるかもしれませんが、それも遺言によって叶えることができます。

 

・再婚して、前婚に子がおり、再婚後にも子がいる場合

前婚の子も相続人になるため、今は仲が良くても、遺言者の死亡後もそうであるとは限らないため、紛争の予防の観点からも必要かと思います。また、前婚及び後婚の子が沢山いる場合、話がまとまらず時間だけが経過するケースも多いです。

 

・相続人以外の方に財産を遺したい場合

相続人がいて、遺言がない場合、相続人でない方に財産が行く可能性は少ないです。

寄付やご自身の子の配偶者などにも財産をあげたいと考える場合、遺言がないと実現しません。

 

・内縁関係にある方に財産を遺したい場合

生命保険、退職金、年金などについては、特別な規定があり内縁関係でも受け取れる可能性がありますが、その他の財産については相続人ではないため、遺言がなければ遺すことができません。

 

・相続人がいない方や相続人に行方不明の方がいる場合

遺言書がない場合、相続財産管理人等の選任申立てをしなければならず、遺された方が時間も費用負担もしなければならなくなります。

それを避ける意味でも、遺言書を作っておくことは有効です。

 

法定相続情報証明制度

法定相続情報証明制度は,平成29年5月29日に始まりました。

一度証明を受けると,亡くなった方の出生から死亡時までの除籍謄本等(これだけで数通の謄本等が必要です),相続人の方の戸籍抄本等が不要になり,金融機関や保険会社,税務署等の手続きも1枚の証明書だけで済んでしまいます。

しかも,何枚証明書を申請しても,申請自体は無料のため,除籍謄本等を提出する場所の数だけ証明書の発行を申請してください。

この証明書をもらえば,除籍謄本等は1通だけ(最初の申請だけ)取得すればよいことになります。

どこに申立てをすればよいかですが(管轄),亡くなった方(被相続人)の本籍地もしくは最後の住所地,法定相続情報を申立てた方(申出人)の住所地又は被相続人を表題部所有者もしくは所有権の登記名義人とする不動産の所在地を管轄する法務局の登記官に対してすることができます。

法務局の登記官が証明するため,相続登記に付随して行う方が多いのですが,不動産の名義変更と一緒にこの証明書の発行を別途申請し,発行(法務局の登記官が調査するため,発行に1週間から10日前後必要になります)を受けた後で銀行等に提出することが考えられます。

遺言書

これまで,公正証書で遺言を作成するメリットとしては,その遺言が発効した後に,家庭裁判所での「検認」の手続きをとらなくても,例えば,相続による不動産の名義変更ができておりました。 自筆証書の遺言の場合,家庭裁判所で「検認」の手続きを経て,検認済みの証明書を遺言書に綴ってもらって,それを利用していました。 公正証書の場合は,この「検認」の手続きを省くことができる結果,直ぐに登記ができておりましたが,自筆証書遺言の場合には,「検認」の手続きを踏まなければならず,1か月以上(検認手続きに時間が掛かるため)かかってようやく登記の名義変更ができる状態になっておりました。 さらに,自筆証書の場合,要件を満たしているか等の懸念もあり,また,遺言書で遺す遺産がたくさんあると,それらを全部,自筆で書くことが大変であることもあって敬遠する方もいましたが,これからは,財産目録のコピー(通帳のコピーを合綴できたり,パソコンでも作成もできる)でも構わず,その遺言書を法務局で預かってくれるため(預かる前の事前段階で,要件クリアーを確認できる),自筆証書遺言が増えると思われます。

相続手続きで確認をしてもらいたいこと

 1 遺言書の検索  多く利用されているのは,「自筆証書遺言」「公正証書遺言」ですので,公正証書遺言については,お近くの公証役場で公正証書遺言の検索をすることもできます。必要書類がありますので,まずはお近くの公証役場で確認をし,予約を入れてみてください。 自筆証書遺言については,ご自宅に保管されているか,専門家を介していると,その専門家の方に預けているケースもあります。 2 相続人の確定   戸籍謄本,除籍謄本,原戸籍謄本で確認できますが,外国人の方については戸籍制度がない国が多いため,出生証明書等を本国官憲で発行してもらうことも必要になります。 3 相続財産の確定   遺産分割や相続放棄等の検討のため,相続財産の把握が重要です。 相続財産は早めに確認しておいてください。 4 相続放棄申述   相続人になったことを知ってから3か月間という短い時間が設定されていますので,相続の放棄をする方は,お亡くなりになられた方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きを行う必要があります。 5 準確定申告   これまで確定申告をしていた方が亡くなった場合,死亡後4か月以内に確定申告をしなければなりません。 こちらも短い期間が設定されていますので,お亡くなった方がどのような仕事をしていたのか把握していないといけません。 6 遺産分割   相続人全員で,どの遺産を誰が相続するのか決める必要があります。 それを書面化したのが,遺産分割協議書です。 7 相続税の申告   基礎控除額を超える場合,10か月以内に相続税の申告をする必要があります。

自筆証書遺言について

 改正の趣旨 改正法による改正前の民法においては,自筆証書遺言は,全文,日付及び氏名を全て自書し,これに押印をしなければならないとされていたが,この負担を軽減して自筆証書遺言の利用を促進する観点から,その一部が緩和されるものである。改正の概要 自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には,その目録については,自書することを要しないとされ,この場合において,遺言者は,その目録の毎葉に署名し,印を押さなければならないこととされた。これにより,遺言書の末尾に添付されることが多いいわゆる遺産目録については,各ページに署名し,印を押したものであれば,パソコン等により作成したもの,遺言者以外の者が代筆したもの,登記事項証明書等を添付してこれを目録とするもの等であっても認められることとなる。なお,この目録中の加除その他の変更については,この目録以外の部分と同様に,遺言者が,その場所を指定し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押さなければ,その効力を生じないとされた。おって,平成31年1月13日前にされた自筆証書遺言については,なお従前の例によることとされた(改正法附則第6条)。これにより,平成31年1月13日より前に作成された自筆証書遺言については,相続開始が同日以降であっても,従前どおり,全文,日付及び氏名が全て自書されていない場合には無効となるので,留意する必要がある。

相続の基本3類型

相続する前に知っておきたい3形態(相続の種類

単純承認

相続が発生すると,被相続人が一身専属している権利と義務以外の全ての権利と義務が相続人に承継することになります。

権利も義務もということなので,土地の所有権も預貯金債権も被相続人の借金もその全てが承継されます。

相続が開始して,最も多い形態が,この単純承認です。

民法921条では,次に掲げる場合には,相続人は,単純承認したものとみなすとして,

1 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸借をすることは,この限りでない。

2 相続人が第915条第1項の期間内(相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に,相続について,単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。)に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

3 相続人が,限定承認又は相続の放棄をした後であっても,相続財産の全部若しくは一部を隠匿し,私にこれを消費し,又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなったとき。

 

と定められており,3か月という短い熟慮期間内(期間伸長は申立てにより可能)にどの相続形態を選択するかを決めなければならず,その期間を徒過することによって,単純承認していることも多いと思われます。

相続の限定承認や相続の放棄と異なり,単純承認は,家庭裁判所の手続きを経ることなく,最もオーソドックスなスタイルといえますが,消極財産(マイナス財産)が積極財産(プラス財産)より多かったとしても,その負の遺産も相続人が承継することになります。

また,3か月が経過しなくても,相続人が相続財産の一部でも処分したときは,単純承認したものとみなされてしまうため,プラス財産が多いのか,あるいはマイナス財産の方が多いのか確定しない段階においては,被相続人の財産に一切手を付けないことが重要になってきます。

例えば,相続登記をしてしまった後に,莫大な負債が見つかっても,「今から相続の放棄をしよう」としても,単純承認をしたとみなされる結果,もはや相続の放棄をすることはできず,被相続人の借金を返していくか,あるいは相続人自身で支払いが困難であれば自己破産等の債務整理を行う必要も出てきます。

なお,民法915条第2項では,「相続人は,相続の承認又は放棄をする前に,相続財産を調査することができる。」との規定があるため,相続形態を選択する前に遺産の調査を行うことができますが,実際には,三か月以内では足りない場合も多々あるため,この場合には,家庭裁判所に対して,期間伸長の申立てをして,その審判を得てさらに遺産の調査を続行することになります。

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