職権消除と相続財産管理人選任の申立て

市長村長が,職権消除した者について,相続が開始したことになるのか?

「事案の概要」

① 所在不明者が100歳以上の高齢に達している場合には,市町村長が職権により死亡記載をすることができる(戸籍法44条3項・24条2項),というのが戦前からの戸籍実務の取扱いである(高齢者職権消除。大正5年2月3日民事第1836号司法省民事局長回答,昭和6年2月12日民事第1370号司法省民事局長回答,昭和24年9月17日民事甲第2095号法務省民事局長回答,昭和32年1月31日民事甲第163号民事局長回答「100歳以上の高齢者の所在が不明で,その生死及び所在につき調査の資料を得ることができないときは,市町村長より職権消除の許可申請書にその事由を記載し戸籍謄本及び戸籍附票謄本を添付させ,監督法務局又は地方法務局の長においてその消除を許可して差し支えない。」)

②高齢者職権消除の手続きにより,A女の戸籍は,昭和27年11月6日付け許可を得て,同月10日に除籍された。

③そこで,Xは,Aの除籍謄本を添付して,松山家庭裁判所に,相続財産管理人の選任の審判申立てを行った。

「判旨」

原審判取消・申立却下

上記行政通達を根拠として,被相続人Aの戸籍に死亡の記載がなされても,それは単に戸籍行政上の便宜に基づくものであって,失踪宣告の如き法的効果を生ずるものではないことは,いうまでもない。

したがって,被相続人Aの死亡の事実または失踪宣告の審判のなされたことについて,何らの資料がない本件においては,同人の死亡による相続を前提として,相続財産管理人の選任をすることはできないものといわなければならない。

 

上記のような裁判例があるため,職権消除で除籍されたとしても,それだけで死亡した事実は認定されないため,別途失踪宣告を得るなどの方法をとらない限り,相続財産管理人選任の申立てはできないことになります。

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