2020年 4月 の投稿一覧

相続登記を早く行わいといけなくなりました。

相続登記を早く行わなければならなくなりましたが,具体的には,

(設例として,特別受益,遺留分等はないものとします。)

 被相続人A男はB女と結婚し,子Cと子Dがいる。

 B女は,被相続人A男よりも先に死亡している。

 被相続人A男は,遺言書において,子のCに4分の3,Dに4分の1の割合を相続分として記載し,死亡した。

 Dは,被相続人A男名義の不動産について,C,D名義の法定相続(法定相続登記は,D単独でもできます。)による相続登記をしたうえで,法定相続した自己の持分(2分の1)を,金融業者Eに譲渡し,持分移転登記も行った。

 Cは,Eに対し,「遺言書で4分の3としているので,4分の3は自分のものだ」と言えるか?

 改正前であれば,登記なく対抗できたので,その主張は通りましたが,これからは(改正後は),Eが背信的悪意者に該当しない限り,Cは,法定相続分(2分の1)を超える部分は登記がないため,Eに対抗できないこととなります(Eが2分の1を合法的に取得します。)。

もう少し複雑にしてみましょう。

被相続人A男はB女と結婚し,子Cと子Dがいる。

被相続人A男は,遺言書を書き,その内容として,被相続人A名義の不動産は全部B女に相続させ,その他の財産については,B女,子C,子Dで法定相続分にしたがって相続させる,とした。

Dの債権者Eが,被相続人A名義の不動産について,B女,子C及び子D名義の法定相続登記を代位(E単独で出来ます)で行った。

Dの持分について,仮差押えの手続きを始め,仮差押えの登記がなされた。

B女は,Eに対し,「遺言書で不動産の全部は,私に相続させるとなっているので,私に全部の権利がある」と言えるか?

B女は,Eが背信的悪意者でない限り,Dの法定相続分(4分の1)については,(遺言があっても)Eに対抗できないため,B女,子C,子D名義の登記及びE名義の仮差押えの登記が入ったままとなります。

改正相続法で

相続の効力に関して,大きく異なる規定になった条文もありますが,その中でも,特に,

民法第899条の2第1項

この条文では,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901条の規定により算出した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない。」とし,従来の判例とは異なる条文となった。

分かりやすく言うと,法定相続分を超える部分は,登記を先にした者が勝つ(対抗できる)とされました(要は早い者勝ち)。

これまでの判例では,

1 相続分の指定による不動産の権利の取得については,登記なくその権利を第三者に対抗できるとしていました(最判平成5年7月19日)。

また,

2 相続させる旨の遺言があった場合,特段の事情がない限り「遺産分割方法の指定」に当たるとしたうえで,遺産分割方法の指定そのものに遺産分割の効果を認めて,当該遺言によって不動産を取得した者は,登記なくその権利を第三者に対抗することができるとされていました(最判平成14年6月10日)。

これによって,「相続だから放っておけばよい」「遺産分割の話し合いはまとまったので,登記は後で構わない」等とは言えなくなり,早く登記しないと自己の権利が実現できない可能性もあることになりました。