2017年 7月 の投稿一覧

相続と使用貸借

母親と長女が同居しており,母親が死亡した場合,長女は,直ちにその建物から立ち退かなければならないのか?

最判平成8年12月17日

「共同相続人の一人が,相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは,特段の事情のない限り,被相続人と右同居の相続人との間において,被相続人が死亡し相続が開始した後も,遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は,引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって,被相続人が死亡した場合は,その時から少なくとも遺産分割が終了するまでの間は,被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり,右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。

けだし,建物が右同居の相続人の居住の場であり,同人の居住が被相続人の許諾に基づくもであったことからすると,遺産分割までは,同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが,被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。」

 

以上のように,生前,母と子が同居していた場合,母の死後も,子は,遺産分割協議等が終了するまでの間は,その建物に居住することができ,また,使用貸借契約関係が遺産分割が終了するまでは続くことから,子は,無償で居住していられることになります。

職権消除と相続財産管理人選任の申立て

市長村長が,職権消除した者について,相続が開始したことになるのか?

「事案の概要」

① 所在不明者が100歳以上の高齢に達している場合には,市町村長が職権により死亡記載をすることができる(戸籍法44条3項・24条2項),というのが戦前からの戸籍実務の取扱いである(高齢者職権消除。大正5年2月3日民事第1836号司法省民事局長回答,昭和6年2月12日民事第1370号司法省民事局長回答,昭和24年9月17日民事甲第2095号法務省民事局長回答,昭和32年1月31日民事甲第163号民事局長回答「100歳以上の高齢者の所在が不明で,その生死及び所在につき調査の資料を得ることができないときは,市町村長より職権消除の許可申請書にその事由を記載し戸籍謄本及び戸籍附票謄本を添付させ,監督法務局又は地方法務局の長においてその消除を許可して差し支えない。」)

②高齢者職権消除の手続きにより,A女の戸籍は,昭和27年11月6日付け許可を得て,同月10日に除籍された。

③そこで,Xは,Aの除籍謄本を添付して,松山家庭裁判所に,相続財産管理人の選任の審判申立てを行った。

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