2017年 2月 の投稿一覧

自筆証書遺言の押印について

自筆証書遺言は,署名押印を一つの要件としているものの,これが欠けた自筆証書遺言は,効力を生じないか? という問題があります。

 

第968条1項では,「自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければならない。」とされており,押印が欠けると折角の遺言も無効になってしまいます。

 

そして,この趣旨として最高裁(平成1年2月16日判決)は,遺言書全文の自書と相まって遺言者の同一性及び真意を確保するともに,重要な文書については作成者が署名しその下に押印することで文書の作成を完結させるという,我が国の慣行ないし法意識に照らして,文書の完成を担保するところにあるとしています。

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遺言内容と異なる遺産分割協議

相続で,よく相談を受ける一つのテーマとして,

遺言内容と異なる遺産分割協議はできるのでしょうか?

前提条件として,

① 遺言で,遺産分割が禁止されていない。

② 遺言執行者が定められていない(厳密にいうと,遺言執行者が同意すれば可能)。

③ 相続人全員の合意がある。

以上を満たしている場合,次の裁判例によっても,認められています(上記②には裁判例がありますが,割愛してます)。

 

[さいたま地方裁判所平成14年2月7日判決]

(1)特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合には,当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなど の特段の事情のない限り,何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該不動産は当該相続人に相続により承継される。そのような遺言がなされた場合の遺産分割の協議又は審判においては,当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても,当該遺産については, 上記の協議又は審判を経る余地はない。以上が判例の趣旨である(最判平成3年4月19日第2小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)。

しかしながら,このような遺言をする被相続人(遺言者)の通常の意思は,相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生ずることを避けることにあるから,これと異なる内容の遺産分割が全相続人によって協議されたとしても,直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。

被相続人が遺言でこれと異なる遺産分割を禁じている等の事情があれば格別,そうでなければ, 被相続人による拘束を全相続人にまで及ぼす必要はなく,むしろ全相続人の意思が一致するなら,遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当である。 法的には,一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まるものではあるが,このような遺産分割は,相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが 可能であるし,その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明である。また従前から遺言があっても,全相続人によってこれと異なる遺産分割協議は実際に多く行われていたのであり,ただ事案によって遺産分割協議が難航している実状もあることから,前記判例は,その迅速で妥当な紛争解決を図るという趣旨から,これを不要としたのであって,相続人間において,遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず,その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである。

(2)本件においては,本件土地を含むDの遺産につき,原告ら全ての相続人間において,本件遺言と異なる分割協議がなされたものであるところ,Dが遺言に反する遺産分割を禁じている等の特段の事情を認めうる証拠はなく,原告らの中に本件遺産分割に異議を述べる者はいない上,被告は本件遺産分割については,第3者の地位にあり,その効力が直ちに被告の法的地位を決定するものでもないことを考慮すると,本件遺産分割の効力を否定することはできず,本件土地は原告らの共有に属すると認められる。

 

国税庁のホームページより ,

遺言書の内容と異なる遺産の分割と贈与税

【照会要旨】  被相続人甲は,全遺産を丙(三男)に与える旨(包括遺贈)の公正証書による遺言書を残していましたが,相続人全員で遺言書の内容と異なる遺産の分割協議を行い,その遺産は,乙(甲の妻)が1/2,丙が1/2それぞれ取得しました。この場合,贈与税の課税関係は生じないものと解してよろしいですか。

【回答要旨】  相続人全員の協議で遺言書の内容と異なる遺産の分割をしたということは(仮に放棄の手続きがされていなくても),包括受遺者である丙が包括遺贈を事実上放棄し(この場合,丙は相続人としての権利・義務は有していま。),共同相続人間で遺産分割が行われたとみて差し支えありません。したがって,照会の場合には,原則として贈与税の課税は生じないことになります。

 

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