2023年 8月 の投稿一覧

遺留分を侵害する場合

遺言では、往々にして遺留分を侵害する内容で記載する方もいます。

遺留分を請求する場合に備えて、次のような一文を入れる方もいます。

 

第〇条 遺言者は、遺留分侵害額請求は、先ず前条記載の前記長男〇から負担すべきものと定める。

遺言に債務の記載

遺言には、プラス財産だけでなく、マイナス財産(債務)を引き継ぐ人を決めることができます。

ただし、債権者に対しては、「このような遺言があるから、私には請求しないで」とは言えません。原則、相続人の皆さんで被相続人の債務を負担しなければなりません(財産をもらっていない人も、債権者に言われれば、相続分は支払うしかないのが原則です。)。

実際に多くの方が、遺産を引き継ぐ方、もしくは遺産を多く引き継ぐ方が被相続人の債務を負担していると思われますが、揉め事を起こさないために、このようなことも決めておくこともできます(葬儀費用も、明確に誰が支払うべきかは法律では決まっていません。)。

第〇条 遺言者は、次の債務及び費用を長男〇(生年月日)に承継又は負担させるものとし、遺言執行者は、第〇条記載の預貯金等の金融資産から随時その支払いに充てることができる。

(1)遺言者の支払うべき未払いの公租公課、入院費用その他一切の債務

(2)遺言者の葬儀、埋葬等の費用

(3)本遺言の執行に関する費用

(4)遺言執行者に対する報酬

予備的遺言

遺言で、例えば「次の遺言者の財産を妻に相続させる。」と書いた後に、遺言者より先に妻が亡くなった場合、折角書いた遺言が、効力を生じません。

つまり、遺言書がない状態になります。

それを避ける意味でも、第1条に、上記を書き(主位的遺言)、第2条で、予備的に、「遺言者より先に、前記妻が死亡したときは、遺言者の〇〇に相続させる(または遺贈する。)。」とすることもできます。

遺言を残した方がよい方

遺産が少しでもあれば、遺言を書いておくべきですが(遺言があってよかった方も多くいます。)、「まだ先でいいじゃないか?」等で遺言書を遺さずに亡くなってしまう方も多くおります。

遺言書は、亡くなってはじめて効力が生じますので、いわば最後のご自身のお気持ちです。

人の死は、時期も含めて分からいものばかりですが、特に遺言を残しておいた方がよい方を記載してみます。

 

・お子さんのいない方

この場合、相続するのは配偶者とご自身の両親(両親がすでに亡くなっていても祖父母がいれば祖父母)が相続人になります。ご両親等がいなければ、配偶者とご自身の兄弟姉妹にいきます。

仮に兄弟姉妹が既にお亡くなりになっている場合、その子(甥や姪)に相続されます。

兄弟姉妹と付き合いが深い場合は別段かもしれませんが、多くは配偶者に全ての財産をあげたいと思う方が多いと思います。遺言で、全ての財産を配偶者として遺しておけば、その思いは叶えられますが、もし、遺言がない場合には、配偶者とご両親等と話し合わなければ、銀行預貯金も不動産も名義を変えることができません。

しかも、話し合いがまとまったとしても、全員の実印や印鑑証明書が必要となります。

 

・子または相続人の中に、特に世話になった方や今後世話になる方がいる場合

この方たちに多くの財産をあげたいと思うことは、お気持ちとしてよく分かります。

寄与分で調整したり、遺留分を主張される可能性もありますが、遺留分も全部の相続分ではありませんし、お気持ちを残しておくことは大事なことかもしれません。

また、例え遺留分があったとしても、遺留分は主張せずに遺言書に従うことも考えられます。

 

・子または相続人の中に障がいをもつ方や特に保護する必要の方がいる場合

実際には、その方たちに財産を残しても、折角の財産が騙されるなどによって無くなってしまう可能性もあるため、財産管理等を第三者に任せるかもしれませんが、それも遺言によって叶えることができます。

 

・再婚して、前婚に子がおり、再婚後にも子がいる場合

前婚の子も相続人になるため、今は仲が良くても、遺言者の死亡後もそうであるとは限らないため、紛争の予防の観点からも必要かと思います。また、前婚及び後婚の子が沢山いる場合、話がまとまらず時間だけが経過するケースも多いです。

 

・相続人以外の方に財産を遺したい場合

相続人がいて、遺言がない場合、相続人でない方に財産が行く可能性は少ないです。

寄付やご自身の子の配偶者などにも財産をあげたいと考える場合、遺言がないと実現しません。

 

・内縁関係にある方に財産を遺したい場合

生命保険、退職金、年金などについては、特別な規定があり内縁関係でも受け取れる可能性がありますが、その他の財産については相続人ではないため、遺言がなければ遺すことができません。

 

・相続人がいない方や相続人に行方不明の方がいる場合

遺言書がない場合、相続財産管理人等の選任申立てをしなければならず、遺された方が時間も費用負担もしなければならなくなります。

それを避ける意味でも、遺言書を作っておくことは有効です。