限定承認の登記原因証明情報です

※法定相続が終わっていることが前提ですが,その後の登記原因証明情報です。

※義務者が行方不明の場合です。

 

登記原因証明情報

 

1.登記申請情報の要綱
(1)登記の目的   B持分全部移転
(2)登記の原因  平成30年〇月〇日 民法第932条ただし書の価額弁済
(3)当事者
権利者  持分〇分の〇  住所・氏名
義務者  住所・氏名
(4)不動産  後記のとおり

 

2.登記の原因となる事実又は法律行為
(1)平成30年〇月〇日,〇〇(注:法定被相続人)は死亡した。
(2)平成30年〇月〇日,〇〇の子である△△が,相続放棄の申述が受理されて,権利者及び義務者が〇〇の相続人となった。
(3)同年〇月〇日,司法書士阿久根満は,義務者であるBの不在者財産管理人となり,同年〇月〇日,権限外行使として限定承認の申述の許可審判を受けた。
(4)上記(3)により,〇〇の相続人全員(権利者及び義務者)は,千葉家庭裁判所において,相続の限定承認の申述が受理され,相続財産管理人としてAが選任された。
(5)相続財産管理人であるAは,民法第927条の公告及びしれている債権者への各別催告を行った。
(6)本件不動産につき,千葉家庭裁判所において鑑定人が選任され,本件不動産の鑑定評価額は,金〇万円に決定した。
(7)同年〇月〇日,限定承認者Aから,被相続人〇〇相続財産管理人Aに対し,先買権の行使として民法第932条ただし書きの価額弁済金〇万円が支払われた。
(8)司法書士阿久根満は,不在者Bが登記義務者として行う本件登記申請について,権限外として同年〇月〇日,審判を受けた。
(9)よって,本件不動産のB持分は,法定相続登記を経由して,同日,民法第932条ただし書の価額弁済を原因として,BからAに移転した。

 

平成31年〇月〇日      法務局 御中

 

上記の登記原因のとおり相違ありまあせん。

 

権利者  千葉県習志野市津田沼

 

 

義務者  千葉県

 

 

不動産の表示

法人名のフリガナについて

世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(平成29年5月30日閣議決定)の別表において「法人が活動しやすい環境を実現するべく,法人名のフリガナ表記については,・・・登記手続の申請の際にフリガナの記載を求めるとともに,法人番号公表サイトにおけるフリガナ情報の提供を開始することとされました。

平成30年3月12日以降に,商業及び法人登記の申請を行う場合には,申請書に法人名のフリガナを記載しなければならなくなりました。

フリガナは,「株式会社」や「一般社団法人」等を除いて行うこととなり,カタカナでスペースを空けずに詰めて記載します。

また,商業・法人登記申請の機会がない場合には,フリガナに関する申出書を管轄法務局に提出することも可能です。

なお,登記申請書や申出書に記載したフリガナは,国税庁法人番号公表サイトを通じて公表されることになります。

(ただし,外国会社については,税務署に提出した申出書等に記載したフリガナが公表されます。有限責任事業組合契約及び投資事業有限責任組合契約の情報は,法人番号公表サイトでは公表されていません。)

子どもの保護から考える離婚を中心とした裁判手続き

昨日「平成29年度第11回千葉司法書士会の研修会」に参加してきました。

講師は,東京家庭裁判所の判事でした。

離婚調停が,不調(調停不成立)に終わった場合,離婚訴訟になるのですが,その際,以下の3点が必要とのことでしたので備忘録的に記しておきます(聞き取りの際,聞くのを忘れなでください)。

1 子の監護に関する陳述書

2 間取り図

3 収入を証する書面

以上の3点を忘れる(離婚裁判が始まれば教えてくれますが)ことのなきように,最初からあった方がよいですね。

相続の限定承認

限定承認

 

民法922条では,「相続人は,相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して,相続の承認をすることができる。」と規定しております。

 

相続人にとって,相続が開始しても,被相続人の財産や負債の金額が正確に分からない場合もあり,万が一負債の方がプラス財産より多額であったとしても,引き継いだプラス財産の限度で債務(マイナス財産)の弁済等を行う方法です。

プラス財産の方が多いと思って相続を単純承認した後になって多額の負債が出てくる場合もありますし,相続の放棄をしてしまうと,次順位の方が相続人となりますので,次順位の相続人に多少の迷惑が掛かってしまう場合もあり得ますし,放棄をすると,被相続人の所有していた不動産等も手放すことになるため,思い出の場所も手放さなくてはなりません。

相続の単純承認と放棄の中間的なものとして,この限定承認があります。

プラスの財産の範囲でマイナス財産を支払えばよいのなら,こんなうまい話はない,と考える人もいると思いますが,まず,単純承認を選択する場合には,特にどこかに単純承認を宣言する必要はなく,淡々と不動産の名義を変え,預貯金を解約するなどの相続の手続きをすればそれで足ります。

一方,相続の放棄は,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し,放棄の申述をしなければならず,相続放棄申述受理申立書を作成したり必要書類を収集したりしなければなりませんが,手続的には,そんなに複雑なものではなく(被相続人の死亡後数年経っているような場合は,少し難しくなりますが),特に問題がなければ裁判所に申立てをしてから2か月程度で,相続放棄申述受理通知が送付されて,裁判所での手続きは終了します。

本論の限定承認ですが,これは,複数相続人がいる場合,単純承認や相続の放棄の場合には,各相続人が単独で行えるのに対し,限定承認は,相続人全員が共同して行う必要があります。 一人でも反対すれば,この限定承認は利用できません。なお,共同相続人のうち1名が相続の放棄をした場合,残りの相続人が共同して行えば可能です。

また,限定承認は,財産目録の作成から,家庭裁判所への申立て,財産の管理,官報公告,個別催告,財産の処分,配当手付き,譲渡所得税の問題など法律の知識が必要になりますし,期限が定められている作業もあって,簡単な手続きではありません。

 

譲渡所得税について,相続財産の中に,(被相続人が)購入した時の価額より相続開始時点において価額が上昇(キャピタルゲイン)している財産(例えば不動産や株式等)がある場合,相続開始時点で譲渡したものとみなして譲渡所得税が課税されます。

単純承認の場合は,相続人が,相続した財産を売却しない限り発生しない譲渡所得税が,前倒し的に課税されてしまう問題があります。

被相続人の購入原価を引き継ぎますが,被相続人が,当該財産を購入した金額が不明な場合は,売却処分価格の5パーセント相当額が購入原価として取り扱われるため,価格上昇益(キャピタルゲイン)が多きくなる場合が結構あると思われます。

この申告は,被相続人の存命中の財産について,被相続人の所得として相続財産から清算させようとするものですので,準確定申告の方法で行うことになります。

なお,この譲渡所得税の支払いは,被相続人の相続財産から支出し,しかも優先債権であることから,配当の際には,まずは,この支払いに充てることになり,残余額をその他の債権者に配当(按分配当)することになります。

 

そのため,よい制度だと思いますが,複雑,面倒で時間もかかることから,この限定承認を選択される方が少ないのだと思われます。

なお,面倒で時間もかかると述べましたが,これらを専門家に手伝ってもらえれば,面倒さから解放されることも付け加えておきます。

 

限定承認の申立てをしようとする要件は,自己のために相続の開始があったことを知ってから3か月以内に,相続人全員が共同して,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し,限定承認する旨の申述をすることになります。

申立の趣旨は,「被相続人の相続を限定承認します」ということになり,財産目録を作成して申立書と一緒に家庭裁判所に提出します。

申立てに際し必要な書類(第一順位相続人の場合)は,

①被相続人の出生時から死亡時までのつながりのある除籍謄本(改製原戸籍謄本)

②被相続人の住民票除票または戸籍の附票

③申述人全員の(現在の)戸籍謄本

④被相続人の子で死亡している方がいる場合,その子の出生時から死亡時までのつながりのある除籍謄本(改製原戸籍謄本)

 

申立書に貼る収入印紙は,800円で,予納郵券が,申述人の数や裁判所の取扱いによって変わってきますが,申述人3名で500円くらいです。

複数申述人がいる場合は,相続財産の管理人が原則1名,相続人の中から選任されますので,適任者がいれば,申立書の記載の中で,候補者として上申しておくことも検討してください。

 

申立後について

申立書を家庭裁判所に提出して,問題がなければ,相続の限定承認の申述が受理され(審判書の謄本が送付されます),複数申述人がいる場合には,原則1名の相続財産の管理人が選任されます。

民法927条では,限定承認者は,限定承認をした後5日以内に,全ての相続債権者及び受遺者に対し,限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求を申出をすべき旨を公告しなければならない,と規定されており,民法936条3項において,927条1項中,限定承認をした後5日以内とあるのは,その相続財産の管理人の選任があった後10日以内,と読み替えるとの規定があります。

したがって,限定承認者が1名の場合は,この官報公告を相続の限定承認が受理されてから5日以内に,複数いる場合には,相続財産の管理人が選任されてから(限定承認の申述の受理と同時)10日以内に行わなければならないことになります。

相続の限定承認受理通知書は,何もしなければ郵送で送付されますが,受理された日から既に数日経過して手元に届く場合もあるため,官報販売所には事前に掲載日などを確認し打ち合わせをしておく必要があります。

また,知れている債権者には,各別の催告も行う必要があるため,催告書を作成の上,債権者に通知することになります。

 

財産の換価

被相続人のプラス財産が,債務の引き当てになるため,プラス財産の換価手続きは,公正に行われなければなりません。

民法932条では,原則,相続財産の売却は,競売による方法となっています。

また,同条ただし書では,「家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して,その競売を止めることができる,と規定されています。

競売の場合は,相続人等親族が買い取れる可能性が100%でなく,第三者に落札される可能性がありますし,そもそも,限定承認をした相続人は債務者にあたることから,競売手続きに参加することができません。

愛着のある不動産や事業などを守るために限定承認を選択する相続人もいますので,これでは本末転倒です。

そこで,ただし書の規定によって,家庭裁判所に鑑定人を選任してもらい,鑑定価額以上の金員を相続財産の管理人に支払えば,その財産を買い取った相続人の名義にすることができます。

なお,この権利(先買権)の行使ができるのは,限定承認をした相続人だけが,これを行うことができます。

したがって,鑑定価額を用意できれば,被相続人の財産を相続人の財産にすることが可能となるのです。

単純化して述べれば,不動産の鑑定評価額が500万円,負債が1000万円(抵当権設定なしとする)の場合で,鑑定価額500万円を相続財産の管理人に交付すれば,残りの負債500万円は支払う必要がないことになります。

 

不動産の登記手続きはどうなるのか?

限定承認は,単純承認でもなく相続の放棄でもないが,被相続人の財産を限定があるものの承継する手続きであるため,法定相続による所有権移転手続きをまずは行うことになります。

 

限定承認者A(妻)・B(子)とした場合

法定相続分による相続登記を行うと,

持分2分の1 A

持分2分の1 B

 

なお,法定相続分と異なる割合で相続登記を行うと,相続人間における財産の処分とも評価し得るため,まずは,法定相続分に基づいて相続登記を行う必要がある。

 

次に,A(妻)が,先買権を行使して,鑑定評価額500万円を相続財産の管理人に交付した場合

 

登記の目的 B持分全部移転

原   因 民法932条ただし書による価額弁済

権利者   持分2分の1 A

義務者          B

 

これで,A(妻)の単独所有の不動産になるのです。

 

ここまででの問題点として,

①鑑定人選任の申立ての際の鑑定費用等は,どこから支出するのか?

これは,申立てをした限定承認者の負担になると考えられますので,被相続人の相続財産からの支出は避けるべきです。

②鑑定評価額の支払原始はどうしたらよいか?

先買権を行使する自己の財産から支弁する必要がありますが,生命保険金があれば,この保険金で支払うことも可能です。

なお,生命保険金ですが,全てではありませんが,例えば,保険金受取人が特定の相続人と指定されている場合は,相続財産とはならず,指定された相続人の固有財産となるため,このような保険契約の場合には,例え相続の放棄をしても,保険金は,相続人が受領することができます。

 

限定承認の相続財産の管理人は,相続人不存在時の相続財産管理人や不在者財産管理人と違って,裁判所の監督を受けませんので,特に,選任後の報告義務などは定められておりません。

全て,相続財産の管理人の裁量と責任で行う必要があり,清算弁済手続きに瑕疵があった場合は,損害賠償の責めを負うことになるため,注意が必要です。

 

配当手続き

上記のとおり,相続財産の管理人は,相続財産を競売又は鑑定人の鑑定評価額以上の金員を受領し,換価手続きが完了され,相続債務の弁済が実行されて,限定承認の手続きは終了します。

配当順序

①優先債権

②一般債権

③受遺者

④期間内に申出をしなかった債権者,知れていない債権者

⑤期間内に申出をしなかった受遺者

 

相続財産の管理人は,弁済期にない債権であっても,弁済をしなければなりませんし,条件付き債権又は存続期間の不確定な債権は,家庭裁判所の選任した鑑定人の評価に従って弁済しなければなりません。

 

相続の基本3類型

相続する前に知っておきたい3形態(相続の種類

単純承認

相続が発生すると,被相続人が一身専属している権利と義務以外の全ての権利と義務が相続人に承継することになります。

権利も義務もということなので,土地の所有権も預貯金債権も被相続人の借金もその全てが承継されます。

相続が開始して,最も多い形態が,この単純承認です。

民法921条では,次に掲げる場合には,相続人は,単純承認したものとみなすとして,

1 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸借をすることは,この限りでない。

2 相続人が第915条第1項の期間内(相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に,相続について,単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。)に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

3 相続人が,限定承認又は相続の放棄をした後であっても,相続財産の全部若しくは一部を隠匿し,私にこれを消費し,又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなったとき。

 

と定められており,3か月という短い熟慮期間内(期間伸長は申立てにより可能)にどの相続形態を選択するかを決めなければならず,その期間を徒過することによって,単純承認していることも多いと思われます。

相続の限定承認や相続の放棄と異なり,単純承認は,家庭裁判所の手続きを経ることなく,最もオーソドックスなスタイルといえますが,消極財産(マイナス財産)が積極財産(プラス財産)より多かったとしても,その負の遺産も相続人が承継することになります。

また,3か月が経過しなくても,相続人が相続財産の一部でも処分したときは,単純承認したものとみなされてしまうため,プラス財産が多いのか,あるいはマイナス財産の方が多いのか確定しない段階においては,被相続人の財産に一切手を付けないことが重要になってきます。

例えば,相続登記をしてしまった後に,莫大な負債が見つかっても,「今から相続の放棄をしよう」としても,単純承認をしたとみなされる結果,もはや相続の放棄をすることはできず,被相続人の借金を返していくか,あるいは相続人自身で支払いが困難であれば自己破産等の債務整理を行う必要も出てきます。

なお,民法915条第2項では,「相続人は,相続の承認又は放棄をする前に,相続財産を調査することができる。」との規定があるため,相続形態を選択する前に遺産の調査を行うことができますが,実際には,三か月以内では足りない場合も多々あるため,この場合には,家庭裁判所に対して,期間伸長の申立てをして,その審判を得てさらに遺産の調査を続行することになります。

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相続と使用貸借

母親と長女が同居しており,母親が死亡した場合,長女は,直ちにその建物から立ち退かなければならないのか?

最判平成8年12月17日

「共同相続人の一人が,相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは,特段の事情のない限り,被相続人と右同居の相続人との間において,被相続人が死亡し相続が開始した後も,遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は,引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって,被相続人が死亡した場合は,その時から少なくとも遺産分割が終了するまでの間は,被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり,右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。

けだし,建物が右同居の相続人の居住の場であり,同人の居住が被相続人の許諾に基づくもであったことからすると,遺産分割までは,同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが,被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。」

 

以上のように,生前,母と子が同居していた場合,母の死後も,子は,遺産分割協議等が終了するまでの間は,その建物に居住することができ,また,使用貸借契約関係が遺産分割が終了するまでは続くことから,子は,無償で居住していられることになります。

職権消除と相続財産管理人選任の申立て

市長村長が,職権消除した者について,相続が開始したことになるのか?

「事案の概要」

① 所在不明者が100歳以上の高齢に達している場合には,市町村長が職権により死亡記載をすることができる(戸籍法44条3項・24条2項),というのが戦前からの戸籍実務の取扱いである(高齢者職権消除。大正5年2月3日民事第1836号司法省民事局長回答,昭和6年2月12日民事第1370号司法省民事局長回答,昭和24年9月17日民事甲第2095号法務省民事局長回答,昭和32年1月31日民事甲第163号民事局長回答「100歳以上の高齢者の所在が不明で,その生死及び所在につき調査の資料を得ることができないときは,市町村長より職権消除の許可申請書にその事由を記載し戸籍謄本及び戸籍附票謄本を添付させ,監督法務局又は地方法務局の長においてその消除を許可して差し支えない。」)

②高齢者職権消除の手続きにより,A女の戸籍は,昭和27年11月6日付け許可を得て,同月10日に除籍された。

③そこで,Xは,Aの除籍謄本を添付して,松山家庭裁判所に,相続財産管理人の選任の審判申立てを行った。

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法定相続情報証明制度

平成29年5月29日(月)から,全国の法務局において,各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。

今までは,銀行預金等の相続手続では,お亡くなりになられた方の出生からの戸除籍謄本等の束(多ければ何十通)を,相続手続を取り扱う各窓口に何度も出し直す必要がありました。

法定相続情報証明制度は,法務局に戸除籍謄本等の束を提出し,併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すれば,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してくれます。

その後の相続手続は,法定相続情報一覧図の写しを利用いただくことで,戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。

これで,同時に,複数の相続手続きを行うことができ(これまで同時に行う場合には,戸籍の束の原本を何通も用意しなければなりませんでした),時間と各窓口担当者の事務負担の軽減が図られ,迅速に相続手続きを進めることができるようになります。

お亡くなりになられた方が不動産を所有していた場合,不動産の相続登記申請と同時に,この申出をすれば,1回の手続きで不動産の相続登記と法定相続情報一覧図の交付を受けることができ,交付を受けた法定相続情報一覧図を,他の管轄の不動産登記申請に利用したり,預貯金の相続手続きに利用できるなど,活用の場は広がっていくと思われます。

注意点としては,この法定相続情報一覧図は,相続手続きだけに利用が認められること,法定相続人を一覧図で明らかにするものであって,相続放棄や遺産分割協議の結果や法定相続分の記載がなされるものではないことなど,様々な形態のある相続手続きにおいてこれで全て事が足りるというではないことはご理解いただきたいと思います。

自筆証書遺言の押印について

自筆証書遺言は,署名押印を一つの要件としているものの,これが欠けた自筆証書遺言は,効力を生じないか? という問題があります。

 

第968条1項では,「自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければならない。」とされており,押印が欠けると折角の遺言も無効になってしまいます。

 

そして,この趣旨として最高裁(平成1年2月16日判決)は,遺言書全文の自書と相まって遺言者の同一性及び真意を確保するともに,重要な文書については作成者が署名しその下に押印することで文書の作成を完結させるという,我が国の慣行ないし法意識に照らして,文書の完成を担保するところにあるとしています。

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遺言内容と異なる遺産分割協議

相続で,よく相談を受ける一つのテーマとして,

遺言内容と異なる遺産分割協議はできるのでしょうか?

前提条件として,

① 遺言で,遺産分割が禁止されていない。

② 遺言執行者が定められていない(厳密にいうと,遺言執行者が同意すれば可能)。

③ 相続人全員の合意がある。

以上を満たしている場合,次の裁判例によっても,認められています(上記②には裁判例がありますが,割愛してます)。

 

[さいたま地方裁判所平成14年2月7日判決]

(1)特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合には,当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなど の特段の事情のない限り,何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該不動産は当該相続人に相続により承継される。そのような遺言がなされた場合の遺産分割の協議又は審判においては,当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても,当該遺産については, 上記の協議又は審判を経る余地はない。以上が判例の趣旨である(最判平成3年4月19日第2小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)。

しかしながら,このような遺言をする被相続人(遺言者)の通常の意思は,相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生ずることを避けることにあるから,これと異なる内容の遺産分割が全相続人によって協議されたとしても,直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。

被相続人が遺言でこれと異なる遺産分割を禁じている等の事情があれば格別,そうでなければ, 被相続人による拘束を全相続人にまで及ぼす必要はなく,むしろ全相続人の意思が一致するなら,遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当である。 法的には,一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まるものではあるが,このような遺産分割は,相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが 可能であるし,その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明である。また従前から遺言があっても,全相続人によってこれと異なる遺産分割協議は実際に多く行われていたのであり,ただ事案によって遺産分割協議が難航している実状もあることから,前記判例は,その迅速で妥当な紛争解決を図るという趣旨から,これを不要としたのであって,相続人間において,遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず,その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである。

(2)本件においては,本件土地を含むDの遺産につき,原告ら全ての相続人間において,本件遺言と異なる分割協議がなされたものであるところ,Dが遺言に反する遺産分割を禁じている等の特段の事情を認めうる証拠はなく,原告らの中に本件遺産分割に異議を述べる者はいない上,被告は本件遺産分割については,第3者の地位にあり,その効力が直ちに被告の法的地位を決定するものでもないことを考慮すると,本件遺産分割の効力を否定することはできず,本件土地は原告らの共有に属すると認められる。

 

国税庁のホームページより ,

遺言書の内容と異なる遺産の分割と贈与税

【照会要旨】  被相続人甲は,全遺産を丙(三男)に与える旨(包括遺贈)の公正証書による遺言書を残していましたが,相続人全員で遺言書の内容と異なる遺産の分割協議を行い,その遺産は,乙(甲の妻)が1/2,丙が1/2それぞれ取得しました。この場合,贈与税の課税関係は生じないものと解してよろしいですか。

【回答要旨】  相続人全員の協議で遺言書の内容と異なる遺産の分割をしたということは(仮に放棄の手続きがされていなくても),包括受遺者である丙が包括遺贈を事実上放棄し(この場合,丙は相続人としての権利・義務は有していま。),共同相続人間で遺産分割が行われたとみて差し支えありません。したがって,照会の場合には,原則として贈与税の課税は生じないことになります。

 

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