配偶者居住権

よくあるご質問で,配偶者居住権は何ですか?と尋ねられますが,

端的にいうと,被相続人が所有していた居住建物の所有権を取得せずに,その建物を無償で居住,使用,収益することができる権利です。

したがって,被相続人の配偶者が,被相続人が所有していた居住建物の名義人になる場合には,考えなくてよい制度です。

自分以外のものに,「自分が所有者だから出ていけ」といわれる心配がないからです(最初は仲が良くても,数年後にこのようなことをいう自分以外の相続人が発生したりするからです)。

会社法一部改正

 令和元年12月4日に,会社法の一部を改正する法律が成立しました。

 概要をお伝えすると,

・株主に対して早期に株主総会資料を提供し,株主による議案等の検討期間を十分に確保するため,株主総会資料を自社のHP等に掲載し,株主に対して当アドレス等を書面で通知する方法により,株主に総会資料を提供できること。

・株主提案権の濫用的な行使を制限するため,株主が同一の株主総会において提案できる議案の数を制限すること。

・取締役の報酬等を決定する手続等の透明性を向上させ,また,株式会社が業績等に連動した報酬等をより適切かつ円滑に取締役に付与することができるようにするため,上場会社は,取締役の個人別の報酬等に関する決定方針を定めなければならないとするとともに,上場会社が取締役の報酬等として株式の発行等をする場合には,金銭の払い込み等を要しないなどの規定を設けること。

・役員等にインセンティブを付与するとともに,役員等の職務の執行の適正さを確保するため,役員等がその職務の執行に関して責任追及を受けるなどして生じた費用等に関する補償契約や,役員等のために締結される保険契約に規定を設けること。

・上場会社等に社外取締役を置くことを義務付けること。

・社債の管理を自ら行う社債権者の負担を軽減するため,会社から委託を受けた第三者が,社債権者による社債の管理の補助を行う制度(社債管理補助者制度)を創設すること。

・企業買収に関する手続きの合理化を図るため,株式会社が他の株式会社を子会社化するに当たって,自社の株式を当該他の株式会社の株主に交付することができる制度を創設すること。

令和2年6月24日通知

法務局における遺言書の保管等に関する法律の施行に伴う不動産登記事務の取り扱いについて,という通知が発せられました。

 法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「法」という。)が本年7月10日に施行されるところ,これに伴う不動産登記事務の取扱いについては,下記の点に留意されたい,とされました。

 法の施行により,自筆証書によってした遺言に係る遺言書(以下,単に「遺言書」という。)について,法に基づき保管の申請がされた場合には,遺言者の相続人等は,遺言書保管官に対し,当該遺言書について,遺言書保管ファイルに記録されている事項(法7条第2項各号)を証明した書面である「遺言書情報証明書」の交付を請求することができることとされた(なお,遺言書保管所に保管されている遺言書については,家庭裁判所の検認手続は不要である(法第11条)。)。

 遺言書保管所に保管されている遺言書に基づいて不動産登記の申請がされる場合には,添付情報として遺言書情報証明書が提供されてることになるが,遺言書情報証明書には,遺言書の画像情報のほか,遺言書に係る情報の管理に必要な事項が記載されているところ,不動産登記申請の審査に当たっては,遺言書そのものの内容である遺言書情報証明書に表示された遺言書の画像情報によって行うこととなり,それ以外の記載事項によることはできないので,留意されたい。

 また,不動産登記の申請において,遺言書情報証明書を遺言者の死亡を証する情報として取り扱うことはできない。

特別の寄与

 民法が改正されるまでの間は,寄与分を受けられるのは,相続人に限られておりました。

したがって,相続人でなければ,どんなに被相続人に対して寄与をしたとしても,寄与分として受け取ることができませんでした。

よく事例に挙がるのは,長男(相続人)の嫁(長男の妻)として,長男の父の介護を献身的に一生懸命しても,その父(長男の父)が亡くなった後には(長男の嫁は相続人ではないため)何ももらえないこととなっておりました。

勿論,見返りがあるから行っていたわけではありませんが,相応の遺産の取り分があってもおかしくありませんでした。

これまで,長男の妻の寄与分を考える上で,長男(相続人)の寄与分として,認める裁判例もありましたが,寄与した長男の妻の寄与分が長男に行くことの法的根拠がないことや,それを認めると他の相続人との間で不公平感も生まれることが指摘されておりました。

そこで,相続人以外でも,被相続人と親族であったものは,特別の寄与に預かれるとしました。

しかし,「無償」であることが前提と解すこともできるため,費用負担が長男の妻になされていれば,特別の寄与者とは言えないこととなります。

相続登記を早く行わいといけなくなりました。

相続登記を早く行わなければならなくなりましたが,具体的には,

(設例として,特別受益,遺留分等はないものとします。)

 被相続人A男はB女と結婚し,子Cと子Dがいる。

 B女は,被相続人A男よりも先に死亡している。

 被相続人A男は,遺言書において,子のCに4分の3,Dに4分の1の割合を相続分として記載し,死亡した。

 Dは,被相続人A男名義の不動産について,C,D名義の法定相続(法定相続登記は,D単独でもできます。)による相続登記をしたうえで,法定相続した自己の持分(2分の1)を,金融業者Eに譲渡し,持分移転登記も行った。

 Cは,Eに対し,「遺言書で4分の3としているので,4分の3は自分のものだ」と言えるか?

 改正前であれば,登記なく対抗できたので,その主張は通りましたが,これからは(改正後は),Eが背信的悪意者に該当しない限り,Cは,法定相続分(2分の1)を超える部分は登記がないため,Eに対抗できないこととなります(Eが2分の1を合法的に取得します。)。

もう少し複雑にしてみましょう。

被相続人A男はB女と結婚し,子Cと子Dがいる。

被相続人A男は,遺言書を書き,その内容として,被相続人A名義の不動産は全部B女に相続させ,その他の財産については,B女,子C,子Dで法定相続分にしたがって相続させる,とした。

Dの債権者Eが,被相続人A名義の不動産について,B女,子C及び子D名義の法定相続登記を代位(E単独で出来ます)で行った。

Dの持分について,仮差押えの手続きを始め,仮差押えの登記がなされた。

B女は,Eに対し,「遺言書で不動産の全部は,私に相続させるとなっているので,私に全部の権利がある」と言えるか?

B女は,Eが背信的悪意者でない限り,Dの法定相続分(4分の1)については,(遺言があっても)Eに対抗できないため,B女,子C,子D名義の登記及びE名義の仮差押えの登記が入ったままとなります。

改正相続法で

相続の効力に関して,大きく異なる規定になった条文もありますが,その中でも,特に,

民法第899条の2第1項

この条文では,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901条の規定により算出した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない。」とし,従来の判例とは異なる条文となった。

分かりやすく言うと,法定相続分を超える部分は,登記を先にした者が勝つ(対抗できる)とされました(要は早い者勝ち)。

これまでの判例では,

1 相続分の指定による不動産の権利の取得については,登記なくその権利を第三者に対抗できるとしていました(最判平成5年7月19日)。

また,

2 相続させる旨の遺言があった場合,特段の事情がない限り「遺産分割方法の指定」に当たるとしたうえで,遺産分割方法の指定そのものに遺産分割の効果を認めて,当該遺言によって不動産を取得した者は,登記なくその権利を第三者に対抗することができるとされていました(最判平成14年6月10日)。

これによって,「相続だから放っておけばよい」「遺産分割の話し合いはまとまったので,登記は後で構わない」等とは言えなくなり,早く登記しないと自己の権利が実現できない可能性もあることになりました。

コロナ対策です。

コロナ対策について

・現金に触れる回数を減らすためにキャッシュレス(振込)決済を導入している

・すべてのスタッフにマスク着用を要請している

・換気は常時行っている

・ご相談者様にもマスクの着用をお願いしている

・体調のすぐれないご相談者等はキャンセルしていただいている

・営業時間終了後は,ご依頼者様等の使われる椅子・カウンター・テーブル等のアルコール消毒を励行している

・体調の優れないスタッフは休ませている

・ゴミ箱は蓋付きのものを使用している

法定相続情報証明制度

法定相続情報証明制度は,平成29年5月29日に始まりました。

一度証明を受けると,亡くなった方の出生から死亡時までの除籍謄本等(これだけで数通の謄本等が必要です),相続人の方の戸籍抄本等が不要になり,金融機関や保険会社,税務署等の手続きも1枚の証明書だけで済んでしまいます。

しかも,何枚証明書を申請しても,申請自体は無料のため,除籍謄本等を提出する場所の数だけ証明書の発行を申請してください。

この証明書をもらえば,除籍謄本等は1通だけ(最初の申請だけ)取得すればよいことになります。

どこに申立てをすればよいかですが(管轄),亡くなった方(被相続人)の本籍地もしくは最後の住所地,法定相続情報を申立てた方(申出人)の住所地又は被相続人を表題部所有者もしくは所有権の登記名義人とする不動産の所在地を管轄する法務局の登記官に対してすることができます。

法務局の登記官が証明するため,相続登記に付随して行う方が多いのですが,不動産の名義変更と一緒にこの証明書の発行を別途申請し,発行(法務局の登記官が調査するため,発行に1週間から10日前後必要になります)を受けた後で銀行等に提出することが考えられます。

嫡出子と非嫡出子について

 嫡出子と非嫡出子について,相続手続きについて,次のとおり変更となっております。

 従前は,非嫡出子の相続分は,嫡出子の半分とされておりましたが,同じ割合になりました。

 間違えが多い部分ですので,今一度,掲載しておきます。

 新法が適用されるのは,平成25年9月5日以後に開始した相続です。

 もっとも,平成25年9月4日の最高裁判所の違憲決定があることから,平成13年7月1日以後に開始した相続についても,既に遺産分割が終了しているなど確定的なものとなった法律関係を除いては,嫡出子と嫡出でない子の相続分が同等のものとして扱われることが考えられます。

遺言書

これまで,公正証書で遺言を作成するメリットとしては,その遺言が発効した後に,家庭裁判所での「検認」の手続きをとらなくても,例えば,相続による不動産の名義変更ができておりました。 自筆証書の遺言の場合,家庭裁判所で「検認」の手続きを経て,検認済みの証明書を遺言書に綴ってもらって,それを利用していました。 公正証書の場合は,この「検認」の手続きを省くことができる結果,直ぐに登記ができておりましたが,自筆証書遺言の場合には,「検認」の手続きを踏まなければならず,1か月以上(検認手続きに時間が掛かるため)かかってようやく登記の名義変更ができる状態になっておりました。 さらに,自筆証書の場合,要件を満たしているか等の懸念もあり,また,遺言書で遺す遺産がたくさんあると,それらを全部,自筆で書くことが大変であることもあって敬遠する方もいましたが,これからは,財産目録のコピー(通帳のコピーを合綴できたり,パソコンでも作成もできる)でも構わず,その遺言書を法務局で預かってくれるため(預かる前の事前段階で,要件クリアーを確認できる),自筆証書遺言が増えると思われます。