除籍謄本等が滅失などしている場合の相続登記

相続登記に必要な書類として,被相続人の大体10歳くらいまでの戸籍に遡って除籍・改製原戸籍を取得し,登記申請書に添付しなければなりません。

 しかし,戦災や火災等により一部の戸籍が滅失などしている場合もあって,この場合には,「滅失等により除籍当の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書及び相続人全員が証明した「他に相続人はない」旨の証明書(印鑑証明書添付)が必要でした(昭和44年3月3日付け民事甲第373号民事局長回答)。
 この問題について,平成28年3月11日付け民事局長通達(法務省民二第219号)により,次のように改められることとなりました。
 結論から述べると,上記の添付書類のうち,相続人全員による「他に相続人はいない」旨の証明書が不要となった,ということになります。
 今般の通達の第2段落以降を記載すると,
「しかしながら,上記回答が発出されてから50年近くが経過し,「他に相続人はいない」旨の相続人全員による証明書を提供することが困難な事案が増加していることなどに鑑み,本日以降は,戸籍及び残存する除籍等の謄本に加え,除籍等(明治5年式戸籍(壬申戸籍)を除く。)の滅失等により「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書が提出されていれば,相続登記をして差し支えないものとしますので,その旨貴管下登記官に周知方お取り計らい願います。
 なお,この通達に抵触する従前の取扱いは,この通達により変更したものと了知願います。」

相続の基礎知識

相続とは,ある人の死をきっかけとして,その人(被相続人)が有していた財産や負債等の一切の権利義務を民法で定める一定の親族(相続人)が承継されることをいいます。

民法第882条では,相続開始の原因として, 「相続は、死亡によって開始する。」と定められており,民法第896条において,「相続人は,相続開始の時(被相続人の死亡の時)から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」としております。

承継される財産には,土地や家屋といった不動産,株式等の有価証券,現金・預貯金等のプラスの財産のほかに,借入金や未納の税金といったマイナスの財産も含まれます。

ただし,被相続人が負っていた身元保証などの一身に専属したものは相続の対象となりません。一身専属の例としては,

  • 使用貸借契約における借主の地位
  • 代理における本人・代理人の地位
  • 雇用契約における使用者・被用者の地位
  • 委任契約における委任者・受任者の地位
  • 代替性のない債務(有名画家が絵を描く債務など)
  • 親権者の地位
  • 生活保護給付の受給権者の地位 などがあります。

相続の種類ですが,

①単純承認(プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する)

②限定承認(プラスの財産の額を限度として,借金等のマイナスの財産をも相続する)

③相続放棄(プラスの財産も,借金等のマイナスの財産も一切引き継がない)

の3つがあり,この中からいずれかの方法を選択することとなります。

上記②及び③については,相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し出しなければなりません。したがって,どの方法を選択すべきかどうか判断するためにも,相続財産はできるだけ早く調べて,相続財産の全容を把握することが不可欠となります。

親元から独立して,数十年経過しているような方については,親の近況や財産の状況を知らないため,相続財産の把握に時間がかかることもあります。このような場合には,家庭裁判所で,上記3か月間の期間を伸長してもらう手続きもありますが,これも3か月以内に行わなければなりません。

この3か月以内に何ら手続きを行わないと,自動的に単純承認したものとみなされます。単純承認で相続をしたら,後日,借金等のマイナス財産が発見されても,それは相続人が引き継いで返済する義務が生じてきます。

また,3か月以内であったとしても,相続される方が,亡くなられた方(被相続人)の財産を処分したりした場合には,単純承認したこととなり,相続放棄などが認められない場合もありますので注意が必要です。

税務調査の対象となる主な手口

税務署が,税務調査の対象とする手口として,次のようなものがあります。

1.被相続名義の投資信託を隠ぺい
2.被相続人名義の預貯金を隠ぺい
3.家族名義の預貯金を隠ぺい
4.被相続人の財産のうち現金を隠ぺい
5.相続開始日に被相続人名義の預貯金から出金した現金を隠ぺい
6.遠隔地金融機関を利用した預貯金の隠ぺい
7.被相続人に帰属する家族名義有価証券を隠ぺい
8.生命保険契約の権利を隠ぺい
9.無記名財産を隠ぺい
10.代理人による家族名義の預貯金の隠ぺい
11.架空債務の計上
12.相続人の虚偽答弁
13.被相続人の隠ぺい行為
14.他の相続人や代理人の隠ぺい行為
15.現金の申告漏れ
16.相続開始現在の残高証明書に記載されていない預貯金の申告漏れ
17.公表外の貸金庫

ご注意ください。

株式会社の役員の任期について(法務省)

平成18年5月1日に会社法(平成17年法律第86号)が施行され,早いもので,本年5月で10年を迎えます。

会社法では,公開会社(※)ではない株式会社の取締役及び監査役の任期は,定款で定めることにより,最長で選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができるとされています(会社法332条第2項,336条第2項)。

 

※ 公開会社とは,株式会社が発行する株式の全部又は一部につき,株式の譲渡について株式会社の承認を要する旨の定款の定めがない株式会社をいいます。株式を市場に公開しているかどうかは関係ありません。

 

上記のとおり,任期を伸長されて会社も多くあると思いますので,会社法施行後に取締役及び監査役の任期を伸長している株式会社については,任期が満了する時期を再度御確認いただき,本年の定時株主総会の終結で任期が満了する場合には,定時株主総会における取締役,監査役等の選任,取締役会の決議や取締役の互選等による代表取締役の選定等を行った上,その旨の変更の登記を申請する必要がありますので,御注意ください。

なお, 役員の変更の登記等をしないまま,最後に登記をした時から12年を経過した場合には,休眠整理作業の対象となり,その後も登記又は事業を廃止しない旨の届出をしない場合には,解散したものとみなされ,登記官の職権により解散の登記がされることになりますので,御注意ください。

(一般社団法人又は一般財団法人は,最後の登記から5年を経過していると上記休眠法人に該当します。)

 

平成28年熊本県熊本地方の地震に係る災害に対する金融上の措置

九州財務局より,次の措置が発出されました。

 

平成28415


財務省九州財務局長    
辻   秀 夫
日本銀行熊本支店長    
竹 内 淳一郎

 

 今回の平成28年熊本県熊本地方の地震による被害により災害救助法が適用された熊本県内の被災者に対し、状況に応じ以下の金融上の措置を適切に講ずるよう各金融機関、証券会社等、生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険業者及び電子債権記録機関に要請しました。

また、今後、災害救助法の適用地域が追加された場合も同様に金融上の措置を適切に講ずるよう要請しました。

併せて、本要請内容について営業店への周知徹底を図るとともに、災害被災者の被災状況に応じて、きめ細かく弾力的・迅速な対応に努めるよう要請しましたので、お知らせします。

 

1.金融機関(銀行、信用金庫、信用組合等)への要請

(1)預金証書、通帳を紛失した場合でも、災害被災者の被災状況等を踏まえた確認方法をもって預金者であることを確認して払戻しに応ずること。

(2)届出の印鑑のない場合には、拇印にて応ずること。

(3)事情によっては、定期預金、定期積金等の期限前払戻しに応ずること。

また、当該預金等を担保とする貸付にも応ずること。

(4)今回の災害による障害のため、支払期日が経過した手形については関係金融機関と適宜話し合いのうえ取立ができることとすること。

(5)今回の災害のため支払いができない手形・小切手について、不渡報告への掲載及び取引停止処分に対する配慮を行うこと。また、電子記録債権の取引停止処分又は利用契約の解除等についても同様に配慮すること。

(6)損傷した紙幣や貨幣の引換えに応ずること。

(7)国債を紛失した場合の相談に応ずること。

(8)災害の状況、応急資金の需要等を勘案して、融資相談所の開設、融資審査に際して提出書類を必要最小限にする等の手続きの簡便化、融資の迅速化、既存融資にかかる返済猶予等の貸付条件の変更等、災害の影響を受けている顧客の便宜を考慮した適時的確な措置を講ずること。

(9)「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の手続き、利用による効果等の説明を含め、同ガイドラインの利用に係る相談に適切に応ずること。

10)休日営業又は平常時間外の営業について適宜配慮すること。

また、窓口における営業が出来ない場合であっても、顧客及び従業員の安全に十分配慮した上で現金自動預払機等において預金の払戻しを行う等災害被災者の便宜を考慮した措置を講ずること。

11)(1)~(10)にかかる措置について実施店舗にて店頭掲示を行うとともに可能な限り顧客に対し広く周知するよう努めること。

12)営業停止等の措置を講じた営業店舗名等、及び継続して現金自動預払機等を稼動させる営業店舗名等を、速やかにポスターの店頭掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載し、顧客に周知徹底すること。

 

2.証券会社等への要請

(1)届出の印鑑を紛失した場合でも、災害被災者の被災状況等を踏まえた確認方法をもって本人であることを確認して払戻しに応ずること。

(2)有価証券紛失の場合の再発行手続きについての協力をすること。

(3)災害被災者から、預かり有価証券等の売却・解約代金の即日払いの申し出があった場合に、可能な限り払戻しに応ずること。

(4)(1)~(3)にかかる措置について実施店舗にて店頭掲示等を行うとともに、可能な限り顧客に対し広く周知するよう努めること。

(5)窓口営業停止等の措置を講じた場合、営業停止等を行う営業店舗名等を、速やかにポスターの店舗掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載し、顧客に周知徹底すること。

(6)その他、顧客への対応について十分配意すること。

 

3.生命保険会社、損害保険会社及び少額短期保険業者への要請

(1)保険証券、届出印鑑等を紛失した保険契約者等については、申し出の保険契約内容が確認できれば、保険金等の請求案内を行うなど可能な限りの便宜措置を講ずること。

(2)生命保険金又は損害保険金の支払いについては、できる限り迅速に行うよう配慮すること。

(3)生命保険料又は損害保険料の払込については、契約者の被災の状況に応じて猶予期間の延長を行う等適宜の措置を講ずること。

(4)(1)~(3)にかかる措置について実施店舗にて店頭掲示等を行うとともに、可能な限り保険契約者等に対し広く周知するよう努めること。

(5)窓口営業停止等の措置を講じた場合、営業停止等を行う営業店舗名等を、速やかにポスターの店舗掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載し、顧客に周知徹底すること。

 

4.電子債権記録機関への要請

(1)災害時における電子記録債権の取引停止処分又は利用契約の解除等の措置について配慮すること。

(2)休日営業又は平常時間外の営業について適宜配慮すること。

(3)上記にかかる措置について実施店舗にて店頭掲示を行うこと。

(4)営業停止等の措置を講じた営業店舗名等を、速やかにポスターの店頭掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載し、顧客に周知徹底すること。